2019.11.11

想定と真逆の展開。
「鹿島らしさ」を発揮したのは川崎だった

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 11月9日にカシマスタジアムで行なわれた一戦は、川崎フロンターレにとって、死ぬか生きるかのサバイバルマッチだった。勝てば3連覇に望みをつなぐが、負ければその夢が絶たれてしまう。まさに、崖っぷちに追い込まれた状況での戦いだったのだ。
 試合後、内田篤人は「決める時に決めないと......」と反省 川崎に王者としての意地を示してもらいたいという想いもあったが、筆者が試合前に思い描いていたシナリオは、Jリーグ史上で唯一、3連覇達成チームの鹿島アントラーズが「君たちにはまだ早いよ」とばかりに川崎に引導を渡すというもの。川崎の猛攻に耐えながらも次第にリズムを掴み、少ないチャンスをモノにして勝利する。鹿島が常勝軍団としての貫禄を示すものだと思っていた。

 そう考えたのは、直近の9試合で負けなしを続けていたことが大きい。相手を圧倒した試合は少なく、僅差での勝利が目立つ。しかし、1点差をモノにする勝負強さこそが、このチームの真骨頂である。

 今夏に鈴木優磨(シント・トロイデン)、安部裕葵(バルセロナB)、安西幸輝(ポルティモネンセ)の3人が海外移籍しても、新たに補った戦力や若手の台頭を促し、チーム力を保ち続ける。そのマネジメント能力も、鹿島というクラブの伝統だ。シーズンも終盤に向かうなか、したたかに勝ち点を積み上げて首位に立つ今の鹿島に、”鹿島らしさ”を存分に感じていたからだった。

 実際にこの試合も、鹿島らしい展開になりかけていた。キックオフからしばらくは、上位決戦らしい一進一退の攻防が続いた。お互いがお互いの良さを消しあい、なかなか決定機は生まれない。サイドから何度かチャンスを作った川崎がわずかに押しているようだったが、それも微々たるもの。土俵の真ん中で、がっぷり四つの状態が続いた。

 ところが前半も30分を過ぎたあたりから、徐々に鹿島が相手を押し込んでいく。35分には内田篤人のクロスから白崎凌兵がシュートを放ち、35分には相手のミスを誘って伊藤翔があわやというフィニッシュを見舞う。セットプレーの機会も増えるなど、鹿島が流れを掴み始めた時間帯だった。