F・マリノス、逆転優勝の重要なカギは
「特別な選手」仲川輝人にアリ

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by Kyodo News

 力強い足取りで先頭グループを追いかける横浜F・マリノスが、ついに首位の背中に張りついた。

 J1第29節、3位の横浜FMは湘南ベルマーレに3-1で勝利。一方で、首位の鹿島アントラーズが松本山雅と1-1で引き分けたため、両者の勝ち点差は最少の1まで縮まった。

 鹿島と勝ち点で並ぶ2位のFC東京を含め、優勝争いは3チームがほぼ横一線。最近6試合で5勝1分けと勢いに乗る横浜FMの逆転優勝も、いよいよ現実味を帯びてきた。

 今節対戦した湘南にしても、現在16位に低迷しているとはいえ、決して戦いやすい相手ではなかったはずである。

 湘南は曺貴裁(チョウ・キジェ)前監督のパワハラ問題が発覚して以降、6試合勝利から遠ざかり(2分け4敗)、最近2試合は0-5、0-6と大量失点での敗戦が続いていた。そこで、新たに就任した浮嶋敏監督は、自身の初陣に際し、"F・マリノス対策"を準備。前監督時代からの3-4-3をベースにしつつも、横浜FMのボール保持率の高いサッカーに対し、「引いて守るのではなく、しっかり前からプレッシャーをかけて、いい形でボールを奪うことを考えて」(浮嶋監督)、守備時は4-4-2にシフトする可変システムを採用した。中盤から前により多くの人数をかけることで、高い位置から積極的にプレスを仕掛けようという狙いである。

 シーズン途中の監督交代というカンフル剤も相まって、湘南は心機一転の試合で、「自分たちのもともとのスタイル、フォームを取り戻すよう1週間やってきた。前の試合に比べると、自分たちらしさを取り戻せた」(浮嶋監督)。

 だが、横浜FMが動じることはなかった。自在のポジショニングで湘南ディフェンスを翻弄した右サイドバック、DF松原健が語る。

「やりにくさはなかった。相手(の布陣)は関係なく、(相手選手の)間で受けることだけ考えていたので、(湘南が4-4-2にしたことは)気づいていなかった」

 横浜FMは、時に素早くワンタッチで、時にタメを作ってツータッチで、相手の出方を見ながら緩急織り交ぜ、テンポよくパスをつなぐ。湘南の果敢なプレスを前にしても、確実に敵陣に攻め入るだけでなく、ペナルティーエリア周辺での崩しのアイデアも豊富だった。

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