2019.10.20

止まらないトリニータ旋風。
「片野坂流」は愚直でブレない

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 あまりにも劇的な結末に、記者席で思わず手を叩いてしまった。観客席に座っていたら、スタンディングオベーションをしていたに違いない。それほどまでに見事な、大分トリニータの”サヨナラゴール”だった。

後藤優介の劇的な決勝ゴールで勝利した大分トリニータ 金曜の夜に埼玉スタジアムで行なわれた一戦。0−0で迎えた終了間際、浦和レッズはホームの声援の後押しを受け、なりふり構わず最後の猛攻を仕掛けていた。ファブリシオがカウンターで抜け出し、エベルトンが強烈な一撃を見舞う。GKの高木駿を中心に何とか耐えしのいでいた大分の守備は、いつ決壊してもおかしくはなかった。

 ところが後半アディショナルタイム、大分は一瞬の隙を逃さなかった。

 相手のシュートを身体を張って食い止めると、すぐさま切り替えてカウンターを発動する。最初の縦パスは相手に止められたものの、こぼれ球を拾って再び縦に供給。ボールが左サイドを駆け上がった田中達也に到達すると、さらにその大外からCBの三竿雄斗が一気に飛び出していく。

 虚を突かれた浦和の選手たちが必死に自陣に戻るも、大分の走力がそれを凌駕する。田中のパスを受けた三竿の放った絶妙なクロスがファーサイドに到達し、長い距離を走り込んだ後藤優介が鮮やかなヘディングシュートを叩き込んだのだ。

 まさに、電光石火の一撃である。呆然とする浦和の選手たちを尻目に、大分サポーターの目の前で白いユニフォームの歓喜の輪が生まれた――。

 今季J1に昇格した大分の躍進は、シーズン終盤になってもなお続いている。開幕戦で鹿島アントラーズを撃破するサプライズを生み出すと、その後も勝ち点を積み重ね、上位争いを演じている。夏場以降にやや失速したものの、この試合を迎える前は8位につけ、10位の浦和よりも上に立っていた。浦和の低迷も想定外とはいえ、開幕前にこの状況を予想できたのは、おそらく大分ファンをのぞけば皆無だったに違いない。

 躍進を牽引するのは、片野坂知宏監督。2016年に当時J3だった大分の監督に就任すると、いきなり優勝を果たしてJ2昇格を成し遂げる。J2での1年目は9位に終わったものの、昨季は2位と結果を出し、就任からわずか2年で”2段階昇進”を実現したのだ。