2019.09.30

イニエスタ復帰で本領発揮。神戸の
豪華な「点」が「線」になってきた

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 山添敏央●写真 phoot by Yamazoe Toshio

 試合前のウォーミングアップ。ゴール裏からの歓声に気づいた彼は顔を向け、拍手で答えた。イエローのシューズの蛍光が眩しい。同じくイエローのビブスは2番だった。

 ロッカールームへ戻る前、彼は右サイドに人を置き、ミドルレンジのパスを左右に5本、正確にひとつひとつ蹴っている。さらに浮き球にし、ボレーでのパスを左右5本ずつ決めた。

「アンドレス・イニエスタ!」

 5本目を蹴り終わると、自分の名前がアナウンスされる。それを合図に、彼は小走りで下がっていった――。

1カ月ぶりに先発に復帰したアンドレス・イニエスタ(ヴィッセル神戸) 9月28日、等々力陸上競技場。9位のヴィッセル神戸は、Jリーグ三連覇に向けて負けられない川崎フロンターレの本拠地に乗り込んでいた。格上のJリーグ王者を相手に、”世界選抜”のような顔ぶれの神戸がどこまで戦えるのか。そこが焦点だった。

 神戸はイニエスタを中心に、DFにベルギー代表トーマス・フェルマーレン、FWに元スペイン代表ダビド・ビジャというワールドクラスを揃えていた。この日はベンチ外だったが、元ドイツ代表ルーカス・ポドルスキも擁する豪華な陣容。さらに山口蛍、酒井高徳という日本代表のワールドカップメンバーが脇を固める。古橋享梧は日本代表入りが噂される新鋭FWだ。

 しかし前半、川崎はチームの完成度で上回った。とくに田中碧が際立ったプレーを見せた。準備動作で優位に立ち、パスカットを繰り返すだけでなく、迅速なつなぎでプレーを動かす。一度はイニエスタを置き去りにしてボールを運ぶなど、出色の出来だった。

「立ち上がり、選手のプレーは決して悪くはなかった。積極的な攻守ができていた。ただ、失点は時間帯を含めて残念だった」(川崎・鬼木達監督)

 前半44分、中盤でボールを取って取られての攻防を繰り返した後、神戸は川崎の縦パスをDFダンクレーがつつき出す。これをビジャが素早く右サイドの奥に流し、受けた古橋は自慢の快足で運ぶと、左を走るビジャへリターン。南アフリカW杯得点王のビジャは左足でニアへ叩き込んだ。