サッカー競技規則改正。FKの壁に関する新ルールの影響はけっこうデカい (4ページ目)

  • 清水英斗●取材・文 text by Shimizu Hideto
  • photo by AFP/アフロ

 そのうえで、どのようにGKの目線からボールを隠すか。もしくは、機能性の高まった壁をかわすサインプレーを発展させるか。あるいは、超級フリーキッカーがぐうの音も出ないボールを突き刺すか。

 一方、戦術的な試行錯誤が続けば、やはりルールの隙間を突く選手が出てくることは想像に難くない。

 たとえば、守備側の壁のほうから、攻撃側の選手の1メートル以内にわざと近づき、レフェリーに笛を吹かせる。そんな行為も出てくるのではないか。その疑問を小川審判委員長にぶつけたところ......。

「壁のほうから勝手に近づいたのなら、もちろん(攻撃側は)ノーファウルです。それはレフェリーが見なければいけない。

 フリーキック時、Jリーグのレフェリーはコミュニケーションシステムを使って連係を取っています。キッカーが蹴るタイミングに合わせて、第4審判や逆サイドの副審は "3・2・1・キック"とカウントを行ないます。そうすることで、主審はキッカーに焦点を合わせず、周囲の選手の様子を見ることができますから、その瞬間に反則があれば、ピッと笛が吹かれます。そういうインカムを使ったテクニックがあるんですよ。

 コーナーキックも同様ですね。たとえば守備側に相手を押し倒す行為があったとして、キッカーが蹴る以前なら、注意または状況によってはイエローカードを出してやり直し。キッカーが蹴った後ならPKなどになります。つまり、インプレーになるタイミングが重要なので、それを明らかにするためにインカムが使われていますね。だから、目を盗んで何かをしようとしても、それはレフェリーが見ていますよ。

 とはいえ、レフェリーは壁だけではなく、周囲の選手も見なければいけないので、壁の辺りは、間接視野で見ることになります。1メートルも厳密に計測するわけではないですし、レフェリーには動く前の残像もありますから、ルールの隙間を突いても、計算したとおりの笛にはならないかもしれません。

 そのリスクを取ってまで、やりますか? 攻撃側ならフリーキックの機会を捨てることになるし、守備側から仕掛ければ、壁が割れてしまいます。そのリスクを取ってもやるのか、ということです」

 たしかに、ルールの隙間を狙いすぎて、チャンスを捨てるのはもったいない。それよりも新たな戦術や技術で魅せてくれることを、ファンは望むだろう。フリーキックがどう変わっていくのか、楽しみだ。次回はPKに関する競技規則改正について見ていきたい。

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