ジワジワ現実味を増すリージョの予言。ビジャはただの点取り屋ではない (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 山添敏央●写真 photo by Yamazoe Toshio

<勝利のストライカー>

 ビジャにはその称号がふさわしい。ユーロ2008では得点王となりスペインを欧州王者に、2010年南アフリカW杯でも得点王としてスペインを世界王者にした。ただ興味深いのは、そのキャリアで得点を量産しているにもかかわらず、得点王になったのはユーロやW杯のような大会だけという点だ。

 なによりもチームの勝利を優先するのが、ビジャという男の信条である。

「ダビドは試合に負けて泣いたことはない」

 かつて、ビジャの原点を取材しに故郷のトゥイージャを訪ね、父メルに息子について聞いた時、そんな答えが返ってきた。

「負けた後のダビドはいつも怒っていたよ。ゴールを外してもそうだが、手をつけられないほど機嫌が悪くなった。あいつにとって、ゴールしてチームが勝つことが、人生そのものなんだ」

 ビジャは得点を狙い、その数を増やす。しかし、それは勝利のための手段のひとつに過ぎない。もっと効率的なやり方があるなら、彼はためらわず、それを選択する。

「必要なら自分がゴールを取る。しかし、チームが勝てばそれでいい。ゴールが自分の仕事なのは当然、弁(わきま)えている」

 ビジャは哲学的に言う。虚栄心はない。しかしゴールゲッターとしての資質はすべて備えている。

「ビジャは次の動きが読めない。ステップが細かいからモーションも読めなくて、打たなさそうなアングルやタイミングからシュートを打ってくる」

 練習からビジャと対峙している神戸のGKたちは、そう言って得点能力の高さを賞賛している。そのプレーは思った以上に速く、猛々しい。気づいたときには、手の届かない場所にシュートを打ち込まれている。

 6月22日、神戸は本拠地ノエビアスタジアムに大分トリニータを迎え撃つ。ビジャはいつものように勝利を目指す。ゴールはそのための手段だ。

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