久保建英が「いつもの形」で得点。コンサドーレは警戒しすぎて自滅した (3ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • photo by AFLO

 また、相手の攻撃に対する警戒心の強さが、自らの特長を打ち消していたのも確かだろう。

 攻撃に厚みをもたらすために全体を押し上げようとしても、前線に残るディエゴ・オリヴェイラの存在が脅威となって、押し上げられない。シンプルに背後を狙うボールが多かったのは、リスクを負いきれなかった札幌の姿勢の表れだった。

「もっと危険に攻めよう」

 ハーフタイムにペトロヴィッチ監督は、そう指示を送っている。

 札幌がようやくリスクをかけられたのは、2点のビハインドを負ってから。それまではサイドからクロスを上げるだけの単調な攻撃が目立っていたが、前に人数がかかったことで、中央からの危険な攻撃を展開できるようになったのだ。フィニッシュ精度を欠き、得点を奪えなかったものの、札幌らしさが示された終盤の猛攻だった。

 4連勝と勢いに乗っていた札幌だが、松本山雅FCに引き分けた前節に続き、ここ2試合は足踏みを強いられている。順位は7位に沈み、上位争いから一歩後退した。

 2試合無得点の原因は、指揮官が言うように、ケガ人の影響は否定できない。得点源のアンデルソン・ロペス、強さと高さを備えたジェイの不在は小さくない痛手だろう。その状況下で求められるのは、指揮官が植えつける攻撃意識ではなかろうか。

 堅守速攻型のチームに先制点を奪われてしまっては厳しい。もちろん、前半からリスクを負って攻めたところで、先にゴールを奪えるとは限らない。むしろ、失点の可能性はさらに高まる。そうなれば、さらなる大敗を招いたかもしれない。

 それでも、攻撃の美学を貫くペトロヴィッチ監督が率いるチームには、先制点を与えない戦いよりも、先制点を奪いにいく姿勢を見せてもらいたかったと、個人的に思うのだ。ペトロヴィッチ監督が就任して2年目の札幌は、まだ発展途中の段階にある。何かを成し遂げるには、痛みが伴う覚悟が必要だ。

 そう、改革者は常に、挑戦者であるべきなのだ。

3 / 3

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る