磐田に「転がり込んだ」劇的勝利。組織力の欠如は改善できるのか (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 山添敏央●写真 photo by Yamazoe Toshio

 カウンターを打ち返すことで、シュート本数では浦和を上回ったが、連係面はノッキングが続いた。各ラインは間延びし、置き去りにされた中盤は、ずっと数的不利だった。

「(ビルドアップでの)ボール回しは厳しいですからね。自分が受けても(パス)コースはあまりないから」(磐田・MF田口泰士)

 田口は追い詰められ、ショートカウンターを浴びるよりはいいと、遠目からシュートを打ってプレーを切っている。リスクを回避する安全策だろう。

 後半に入っても、形勢に大きな変化はなかった。

 開始早々、田口は鋭い出足でインターセプトした後、躊躇なくミドルシュートを打っている。その後も田口は遠目からシュート。相手のハンドで得たFKを直接蹴り込み、GKに冷や汗をかかせた。

 磐田は山田、田口らの個人で組織力の欠如を補い、どうにか戦いを成立させていた。活路はほとんど見えなかったが、幸いにも浦和が選手交代のたびにパワーダウン。敵地で勝ち点1は可能な状況になっていた。

 そして最後の最後に、勝負の天秤が傾く。

「自分たちは攻守ともに"攻撃的"に戦うことができた。それを90分間、やりとおしたことによって、相手のミスが転がり込んできたと思う。これからも、"攻撃的なサッカー"を貫きたい」(磐田・名波浩監督)

「最後まで得点を狙っていた」という意味では、アグレッシブだったということか。

 後半アディショナルタイムだった。浦和は敵陣深くまで押し込みながらも、FWが弱気を出してGKまでバックパスし、それを受けたMFがさらにバックパスを選択。磐田のロドリゲスは、この瞬間を貪欲に狙っていた。怯んだ獲物に食らいつくようにボールを奪い去ると、GKとの1対1を冷静に左へ流し込んだ。

「自分たちが最後までディフェンスを頑張ったことで、それが圧力になってバックパスのミスを誘った。この1勝で我々は自信も取り戻せるだろう。まだまだ下位で、改善は必要だが......」(磐田・GKカミンスキー)

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