2019.05.04

磐田に「転がり込んだ」劇的勝利。組織力の欠如は改善できるのか

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 山添敏央●写真 photo by Yamazoe Toshio

「もう、『全部やってやろう!』と思いました。基本(のポジション)はシャドー(FWの背後)ですけど、ボランチに下がって、サイドもやって、トップ下も。どのエリアもカバーしてやろうって」

 ジュビロ磐田のMF山田大記は、明るい声で言った。その日、彼は八面六臂の活躍を見せた。組織としてたびたび起こる不具合を、個人で修正し続けている。

「これもいい経験ですね!」

 山田はそう言って、ひとつ息を吐いた。

浦和レッズ戦で劇的な決勝点を奪ったロドリゲス(ジュビロ磐田) 5月4日、埼玉スタジアム2002。降格圏の17位に沈む磐田は、5位の浦和レッズと敵地で対戦している。

「磐田が徹底してカウンター狙いなのはわかっていた」

 浦和の選手たちがそう洩らしたように、磐田はとことん受け身で戦っている。能動的なボールプレーはほぼ捨てていた。どのようにボールを動かし、相手をずらし、受けるのか。その工夫はほとんどなかった。組織だっていないために、そこにかまければ後手を踏むのはわかっていたのだろう。たとえばバックラインは、選手の距離からして近すぎ、戦術的な練度の低さは明らかだった。

「(磐田は)プレッシャーもバラバラというか、決められていない感じだったので、その点は楽だった」(浦和・DF鈴木大輔)

 浦和は3バックの右に入った鈴木大輔が、右サイドぎりぎりまで張り出し、その局面を制することによって、全体を優位に動かしていた。鈴木はまず、磐田のルクセンブルグ代表FWロドリゲスを封殺。そして斜めに入れるパスの質は高く、磐田をしばしば混乱させていた。前半43分には、カウンターから猛然と攻め上がると、山中亮輔がインサイドに入れたボールに反応し、エリア内で倒されたように見えたが、笛は鳴らなかった。

 磐田はゴール前にわらわらと人を集める人海戦術で、とにかく浦和の攻撃を耐えた。3-4-2-1というよりは、5-3-2に近い。それぞれが身体を張る籠城戦と言ったらいいのか、攻守ともにオートマチズムは見えない。攻撃はロドリゲスとアダイウトンを走らせるだけ。山田大記が前線で起点になったときは、前半から何度かチャンスに近づいたものの、単発に終わっている。