光る久保建英。バルサ復帰ではなくFC東京残留ならJ1制覇も現実味 (3ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 ボールを持てば常に前を向き、追いすがる相手の前に巧みに身体を入れ、ボール奪取の機会を与えない。重心の低いドリブルでするすると持ち上がり、前線に縦パスを供給するなど、個の力で局面を打開する久保のプレーがFC東京に勢いをもたらした。

 そして75分、左サイドを駆け上がった東慶悟に絶妙なスルーパスを通すと、東のクロスをディエゴ・オリヴェイラが合わせて先制に成功。前線でリズムと違いを生み出した久保のプレーがきっかけで生まれた、見事な一撃だった。

 しかしその後、逃げ切り体制に入ったFC東京を待ち受けていたのは、アディショナルタイムの悲劇だった。長谷川健太監督は「クローザーの不在」を原因のひとつに挙げたように、逃げ切るための方法論を備えていなかったことが、鬼門突破につながらなかった原因だろう。

 それでも、土壇場で"勝ち点2"を失ったとはいえ、無敗をキープ。第5節を終えて名古屋に次ぐ2位と、上位を維持している。

 昨季もFC東京はスタートダッシュに成功し、夏場までは上位を争った。ところが、後半戦は負けが込み、最終的に6位でシーズンを終えている。

 その反省を踏まえ、今季はどのように戦っていくべきか。髙萩はひとつの青写真を描いている。

「連戦になったり、夏場になってくると90分を通してハードワークができなくなってくる。その時に、まずはブロックを作るとか、一回自分たちの形にするところが重要。あとは、ボールを奪ったあと、去年は自分たちでボールを動かす時間が少なかったけど、今年はボールを持って動かす時間を増やすことをやっていきたいと思います」

 攻撃面でカギを握るのは、やはり久保になるだろう。ボールを持てる選手の存在は、やはり貴重である。この日も、ボールを失ったのはわずかに1回のみ。そのドリブルの能力の高さは、J1でも屈指であることは間違いない。すでに久保は、そのレベルにまで達しているのだ。

 預けどころがあれば、後方から攻め上がる時間が生まれ、攻撃の厚みが増す。バルサ復帰も噂されるなか、この17歳がチームにとどまり、シーズンを通してフル稼働できれば、FC東京の悲願のJ1制覇も決して夢物語ではないだろう。

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