貪欲だけどエゴはなし。初ゴールで見せたビジャ流ストライカーの神髄 (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki photo by Masashi Hara/Getty Images

 今日は高い位置でボールを動かせるようになったら、相手センターバックの近いところに人を集め、連係で崩し、得点を狙う戦い方だった。得点以外にも、チャンスを多く作れたと思う」

 事実、ビジャはゴールを狙うだけにとどまらなかった。同胞アンドレス・イニエスタとだけでなく、ポドルスキ、古橋、山口蛍、ダンクレーなどとほぼ全方位で連係し、鳥栖の守備陣を籠絡した。フリックパスで右サイドバック、西大伍の攻め上がりを促し、左へ流れてから左サイドバックの初瀬亮を中に入れ、シュートをアシストするなど、まさに神出鬼没だった。

 大事なのは、ビジャがすでに攻撃の渦の中心にいることだろう。

「練習ではすごいシュートを決めていますよ。そこから決めちゃうんだ、みたいな。公式戦で(点を)取ったんで、乗ってくるはずです」

 神戸の選手は、試合後にはそう洩らしている。

 ビジャは去年の11月が最後の実戦で、これからさらにチームにフィットしてくるだろう。コンディションが戻るには時間が必要だ。異国での生活で、ストレスもたまる。優秀な通訳がいても、何気ない言葉の問題は抱えている。そしてチームメイトの特徴をつかみ、プレーリズムの違いをアジャストさせる作業は、一筋縄ではいかない。

「神戸がタイトルを取るために必要なのが、ビジャだった」

 リージョはそう熱く語っていたが、チームが栄冠に近づくとき、ビジャもゴールを量産しているだろう。その逆も然りだ。

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