新生鳥栖に暗雲漂う。スペイン人監督の「戦術トーレス」は諸刃の剣だ (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki 岸本勉●写真 photo by Kishimoto Tsutomu

 少なくともこの試合では、格下であるはずの福岡のほうが、ボールを運ぶルートは見えた。守備も規律正しく、トレーニングの成果が伝わった。後半は体力的にバテて、選手交代によってプレー精度が落ちたが、仕上がりのよさを示していた。

 鳥栖は後半、キャンプで採用していない3バックに変更。守りを厚くし、前線の一発にかけるしかなかった。個の強さで勝ち切ったに過ぎない。

 そもそも、4-3-3というシステムは適切なのか。金崎夢生、趙東建、豊田陽平、ビクトル・イバルボなど、センターフォワードがだぶつく陣容でトーレスの1トップ。一方でサイドアタッカーは新加入のイサック・クエンカのみ。インサイドハーフに適応する選手も見当たらない。

 さらにセンターバックは怪我人が続出。にもかかわらず3バックを......。Jリーグ開幕に向け、不安要素の多い勝利だった。

「サッカーにミスはつきもの。怖がらず、トライしてほしい。そのトライは受け入れるから」

 カレーラスは選手にそう言って、叱咤激励している。しかし、プレーのメカニズムにズレがあるなかで、完成に近づけることができるのか。トーレスは得点を増やせるはずだが――。

「名古屋(グランパス)はジョーのような選手もいるので、チーム全体で守る意識を持たないと。攻撃をしていても、次の準備をして、とにかく勝つ試合をしたい」

 福岡戦で唯一の光明と言えるプレーを見せていたセンターバックの高橋祐治は、開幕戦に向けての意気込みを語っている。

 2月23日、こけら落としとなる駅前不動産スタジアムで、鳥栖は名古屋を迎え撃つ。

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