ジュビロ名波監督が明かす、川崎戦のあとの「尋常じゃない1週間」 (2ページ目)

  • 原田大輔●取材・構成 text by Harada Daisuke
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 川崎戦を終えたあとは、コーチ陣と一緒に車で帰ってきたんだけど、川崎から磐田までのおよそ3時間、車内では誰も言葉を発しなかった。本当にひと言も......。それで、クラブハウスに着いたのが、19時半ぐらいだったかな。当然、周囲は真っ暗。でもその中で、自分はグラウンドを1時間近く、ひとりで走った。

 汗をかいて、体が火照っていたこともあって、その後、人気のないグラウンドで大の字に寝っ転がって、15分くらい、いろいろと考えていた。そうしていると、(強化部長の)服部(年宏)がクラブハウスに戻って来ているのがわかったから、シャワーを浴びて、服部の部屋に行った。そこで、『(J1参入プレーオフ決定戦で)勝っても、負けても、(監督を)辞めるから』と告げた」

――ということは、川崎戦を終えた時点で、監督を退任しようと思ったのですか。

「何より大事なことは、チームをJ1に残留させること。現場のトップとして、そこに集中しなければならないからこそ、自分自身は退路を断とうと思った。監督を続ける、続けないという、先への邪念をすべて取っ払ったうえで、試合に臨もうと。もちろんそのときは、服部からも、クラブの社長からも、『そんなことは保留だ』と言われたんですけどね。でも、自分の中で腹は決まっていた」

――話を戻しますが、川崎戦を終えたあと、磐田に帰ってくるまでの道中、さらにひとりでグラウンドを走っているときは、何を考えていたのですか。

「(J1参入プレーオフ決定戦の)対戦相手である東京ヴェルディがどうこうとかではなく、まずは試合までの1週間で、チームとしての気持ちをどう切り替えればいいか、それをずっと考えていた。でも、考えれば考えるほど、自分が一番(気持ちを)切り替えられていないなっていうのを痛感させられた。こう言うと変だけど、切り替えられない自信があったというか......。

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