転換期のJリーグ。福田正博はクラブの「哲学」と「継続」を評価 (4ページ目)
期待感で言えば、名古屋グランパスは期待を裏切る結果だった。開幕前に元ブラジル代表FWのジョーを獲得し、シーズン途中に大型補強をしながらかろうじて残留して15位。風間八宏監督はシーズン途中で解任されていても不思議はない成績だった。しかし、バルサのサッカーと同じで、「風間サッカー」を浸透させるには時間がかかるとクラブ運営陣が理解して、体制の継続を決めた。それだけに、来季は結果と内容が問われるシーズンになるし、風間カラーをより鮮明に打ち出してくれることを望みたい。
ミハイロ・ペトロヴィッチ監督を招聘して1年目のコンサドーレ札幌は、期待以上の結果と内容を見せてくれた。ACL出場権内の3位の座をつかみかけたが、惜しくも4位。選手やサポーターは悔しかっただろうが、最良の順位だったのではないだろうか。なぜなら、準備不足のままACLとリーグ戦の両方を戦えば、どちらもボロボロの結果になりかねないからだ。出場権を手にしてから補強を進めて新戦力を獲得しても、ペトロヴィッチ監督の戦術は特殊な部分があるため、すぐに浸透するものでもない。トレーニングで積み上げていくのがペトロヴィッチ監督のスタイルなので、2020年シーズンのACL出場に向けた準備を、来季リーグ戦を戦いながら進めてもらいたい。
ペトロヴィッチ監督については、これまでと評価が変化した点があった。それは札幌ではジェイと都倉賢の"高さ"という武器を上手に生かしたことだ。これは広島や浦和を率いた頃には見られなかった手法で、これによってジェイもフィットして9得点、都倉も1トップや2シャドーの一角で存在感を放って12得点を記録した。
ただ、来季は都倉がセレッソ大阪へ移籍し、三好康児も川崎へのレンタルバックが決まった。主力が抜ける痛手はあるが、ペトロヴィッチ監督は選手たちに新たな発見を与えてくれる指導者なので、彼のもとでプレーしたいと希望する選手たちは少なくないはずだ。クラブを率いる元Jリーガーの野々村芳和社長は長期的なビジョンを描いており、斬新な取り組みで北海道から巻き起こる旋風を来季も楽しみにしている。
来季からは外国人枠の規制も緩やかになるが、ヴィッセル神戸のように大金を注ぎ込むことだけが強化ではない。札幌のチャナティップや広島のティーラシンのようにタイ代表選手を獲得する手もある。さまざまな選択肢があるなかで問われるのは、クラブ運営陣の知恵と人脈、それらすべてのマネジメントになる。その結果として、転換期にあるJリーグで確固たる存在感を放つクラブと、そうではないクラブが、来季はこれまで以上に明確になるのではないかと考えている。
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