横浜FCのアディショナルタイムの悪夢から学ぶ「サッカーの本質」

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • photo by Nikkan sports/AFLO

 はっきりと見えていたJ1への道のりが、悪夢のようなシナリオで、断たれた――。

 J1参入プレーオフの2回戦。ホームに東京ヴェルディを迎えた横浜FCは、アディショナルタイムの被弾に泣き、0-1と敗戦を喫した。

横浜FCは土壇場で失点を喫し、J1昇格の夢を断たれた横浜FCは土壇場で失点を喫し、J1昇格の夢を断たれた 第36節から負けなしで、残り4試合で4連勝。怒涛の追い上げを見せた今季の横浜FCは、得失点差で自動昇格の座を大分トリニータに譲ったものの、前年の10位から大きくジャンプアップを果たし、3位でJ1参入プレーオフの出場権を掴んでいた。

 躍進の要因は、昨季終盤に就任したブラジル人のタヴァレス監督が整えた守備戦術にあるだろう。ハイプレスとリトリートを使い分け、相手の攻撃の自由を奪うと、鋭いカウンターからゴールに迫っていく。仕上げ役は、得点源のイバと、かつてJ1でMVPに輝いたレアンドロ・ドミンゲスの2トップだ。強烈な個性を備えたこのふたりを軸に、限られたチャンスをモノにして勝ち点を積み重ねていった。

 とりわけシーズン終盤は、レアンドロ・ドミンゲスの独り舞台だった。卓越したアシスト能力だけでなく、自らもゴールを叩き込み、横浜FCにJ1昇格の可能性をもたらしたのだ。

 ところが、この絶対軸が、最終節で負傷。重要なプレーオフの舞台に立てない事態に見舞われた。

 横浜FCの誤算は、ここにあっただろう。

「選手がケガをしたときの回復に後れをとってしまった。たとえばレアンドロにしても、もう少しやり方が違っていれば、しっかりと回復してこの試合に間に合ったと思う。彼は軸になる選手だ。彼がいないなかで難しい試合になってしまった。チームとして、選手をグラウンドに送り出す部分での問題を抱えていた」

 試合後、タヴァレス監督が吐露したように、レアンドロ・ドミンゲスの不在は、あまりにも大きなダメージとなった。

 もっとも、横浜FCは勇敢な戦いを演じていた。引き分けでも勝ち上がれる状況を踏まえれば、エース不在の状況で守備的な戦いを選択するかと思われたが、立ち上がりから積極性を示し、あくまで勝利を求める戦いを選択したのだ。

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