トーレスも守備に奮闘。鳥栖は「らしさ」を取り戻して生き残った
「鹿島(アントラーズ)を相手に引き分けられる、という考えは甘い」
サガン鳥栖の金明輝監督は、最終節を前にあくまで勝利を目指す戦略を明瞭にしている。第30節、マッシモ・フィッカデンティに代わって監督に就任してからの成績は、3勝1分け。急浮上で降格圏から抜け出した。最終節の鹿島に引き分ければ残留決定、というところまで巻き返していた。
しかし、引き分け狙いほど難しい駆け引きはない。負けた場合、他会場の結果にその身を委ねることになる。J1最終戦は、何が起きてもおかしくはなかった。
中盤まで下がって守備に貢献したフェルナンド・トーレス(サガン鳥栖) 12月1日、鹿島サッカースタジアム。15位の鳥栖は、アジア王者・鹿島の本拠地に乗り込んでいる。立ち上がり、緊張からか少しばたつくが、右サイドバックの小林祐三が2度のパスカットで流れを断ち切るなど、守りでリズムを作り出す。これで主導権を握ると、鹿島陣内でプレー。小野裕二のFKがGKを慌てさせ、右CKからのクロスを高橋秀人がファーポストで叩いたヘディングシュートはわずかにバーを越えた。
「前から行こう、とはみんなで話していました。最初の20分は攻められたので、そこで点が獲れたらよかったですけど」(鳥栖・小野)
だが、前半20分を過ぎると、徐々に鹿島がアジア王者の地力を見せる。ひとりひとりの基本技術が高く、常勝軍団のメンタリティなのか、ディテールで上回る。サイドチェンジからの攻撃は圧巻だ。右サイドから細かくパスをつなぎ、左サイドに展開し、さらにクロスを一気に逆サイドに振って、日本代表FW鈴木優磨が豪快に合わせる。攻勢によって、試合のペースを握り返した。
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