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三竿健斗は感じている。勝たせるプレーとは
「臨機応変に対応すること」 (2ページ目)

  • 寺野典子●文 text by Terano Noriko
  • 渡部 伸●写真 photo by watanabe shin

 蹴りだしたはずのボールは、遠くへは飛ばなかったのだ。今季、清水エスパルスから鹿島へ加入。昌子源の負傷などで出場機会を得ながらも、なかなか勝ち試合に恵まれずにいた。しかし、ここ4試合負けなしで、確かな自信を手にしていたに違いない。しかし、このひとつのミスがもたらす結果は重い。

「責任は感じている。後ろの選手は1回のミスでああいう風になってしまう。90分通して集中し続けること、90分納得できるプレーをして、自分がしっかりやらないといけない。もう試合は終わってしまったので、今日の責任をしっかりと受け止めて、切り替えてやるしかない。自分はやり続けるしかないから。こういう試合のああいうミスのあとの姿勢とか、行動が大事だと思うので、反省をしたうえで切り変えて、次の練習から顔を上げてやりたいと思います」

 重さを実感しているからこそ、犬飼は強い口調で、自身を奮い立たせているようだった。

 植田直通が移籍し、昌子が負傷した。センターバックは25歳の犬飼と20歳の町田浩樹が務めているものの、ベンチには加入したばかりの韓国代表チョン・スンヒョンが座っている。ポジション争いを勝ち抜くうえでも出場機会を無駄にはできない。昌子が戻れば、ベンチ外の可能性だってあるのだ。

「チャンスであることには変わりないですし、そのなかでしっかり結果をださないと意味がない。しっかり勝たなくてはいけないし、今日の試合は本当に叩いておかなければいけない相手だったので、それが本当に悔しい」

 毎試合、課題を口にする町田だが、その言葉からは弱気を感じさせない。チャンスは同時に正念場でもある。経験不足や力の無さを嘆く暇はないし、それが言い訳にもならない。タフに立ち向かわなければ、チャンスを逃すことになってしまう。 

 若い選手の成長を促すために実戦経験は必要不可欠だ。しかし、だからといって、そのために勝利を逃すわけにもいかない。厳しいプレッシャーを自覚し、背負うからこそ、強くなれる。鹿島の選手はそうやって「鹿島の一員」になる。

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