信念を貫き3位。ペトロヴィッチの札幌に、福田正博はロマンを感じる (2ページ目)

  • 津金壱郎●構成 text by Tsugane Ichiro
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 ペトロヴィッチ監督は、判断の差異によって選手同士の距離感が狂うことを避けるために動きを細かくパターン化し、選手が判断を伴う状況を極力作らないようにしている。これがチームに浸透することで、起用される選手が変わっても大きな戦術変更をする必要がなくなるというメリットも生まれる。

 とはいえ、選手が覚えることは多く、広島、浦和時代もチーム全体にペトロヴィッチ監督のサッカーが浸透するまで長い時間を要した。それだけに、札幌でもしばらく我慢の時期が続くだろうと思っていた。

 そんな予想に反して短期間で成果を挙げられたのは、札幌の選手たちが新しい戦術を理解することに前向きだったことに加え、結果が出ていることで浸透スピードが早まるという好循環も生まれているからだろう。

 1トップには高さがある都倉賢やジェイが起用され、その後ろの2シャドーには三好康児とタイ代表のチャナティップが躍動している。クイックネスやテクニックの生きるペトロヴィッチ監督のサッカーだからこそ、2人は攻撃的な能力を前面に出すことができているのだ。

 ただし、ペトロヴィッチ監督の戦術は、圧倒的な個の能力で"違い"を生み出すサッカーではない。左MFの菅大輝や右MFの駒井善成を含め、全員が新システムの中で存分に能力を発揮できていることが今の結果につながっている。圧倒的な能力を持つ選手がいなくても、チームとしての戦い方を徹底させることで成績を残してきた、ペトロヴィッチ監督の"真骨頂"といえるだろう。

 この勢いがシーズン終盤まで続けばいいが、それを望むのは酷なことだ。長いシーズンを戦う中でキーマンとなる選手が故障したり、相手に研究されてきた時に、いかにチームとして戦えるかが課題になる。

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