「大型移籍」は1チームだけ。J1強豪クラブの補強を福田正博が斬る (2ページ目)

  • 津金壱郎●構成 text by Tsugane Ichiro
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 サッカーに慣れ親しんでいない人からしても、試合の見るべきポイントがはっきりする。今シーズンなら、「齋藤学vs横浜F・マリノス」という図式はわかりやすい見どころだ。話題性が高ければメディアも取り上げやすく、サッカーに興味がなかった人も「試合を見てみよう」となるかもしれない。こうした「話題づくり」こそが、結果的に日本サッカー、Jリーグの発展へとつながる。

 そういった意味で、リーグ開幕を前に補強でメディアを賑わせたのが川崎だけだったことには寂しさを覚えた。サッカーファンでも調べないとわからないような移籍ではなく、大々的に報じられて情報が勝手に耳に入ってくるようなワクワク感やドキドキ感のある移籍を、各クラブは意識的にしかけてもらいたい。

 川崎は大久保や齋藤を獲得した一方で、東京五輪世代の三好康児(→札幌)や板倉滉(→仙台)をレンタルで放出した。彼らに出場経験を積ませるのが狙いだと思うが、"チームの血"をうまく循環させているなと感じる。

 三好や板倉はチームに必要でなくて放出されたわけではない。シーズンを通した戦いを考えれば、少なくとも5試合くらいはポイントになる活躍が期待できるし、故障者が出ることを想定してベンチに置きたくなる戦力だ。しかし川崎は、目先のことでなく数年後を見越して経験を積ませることを優先した。そこが素晴らしい。

 そんな川崎とは対照的な補強となったチームの筆頭は、浦和レッズだろう。何より、開幕前にラファエル・シルバが中国2部の武漢卓爾に移籍したのはショックだった。

 戦力的な面はもちろんだが、昨年のACL王者の主力選手が、中国2部のクラブに選手を引き抜かれた。この現実を、どれくらいの人が"Jリーグの危機"と感じているかはわからないが、Jリーグ随一の収益を誇るクラブの主力選手でさえも、中国2部のクラブよりも安い給料しかもらっていないということを、あらためて実感する。

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