「大型移籍」は1チームだけ。
J1強豪クラブの補強を福田正博が斬る
【福田正博 フォーメーション進化論】
J1リーグが開幕した。今年は6月にロシアW杯が控えているだけに、例年以上に注目度が高まってほしいところだ。
シーズンオフの状況を見る限り、Jリーグで唯一の大型補強をしたと言っていいのが、昨年の王者である川崎フロンターレだ。大久保嘉人を1年でチームに復帰させ、齋藤学を横浜F・マリノスから獲得したことから、今シーズンにかける"本気度"が感じられる。
ACL初戦の上海上港戦はスタメンで、Jリーグ第1節のジュビロ戦では途中出場した大久保 悲願のリーグ覇者となって臨む今シーズンは、リーグだけでなく、ACL、国内カップ戦を含めた3冠を狙うべく、戦力を大きく底上げした。特に齋藤の加入は、ケガの影響で開幕からの出場は難しいとはいえ、Jリーグの人気獲得という点でもターニングポイントになると思っている。
横浜F・マリノスのユースで育ち、チームの看板選手として活躍した齋藤が、同じ神奈川県に本拠地を置く川崎に籍を移す。こうした移籍は過去のJリーグではほとんどなかったが、主力選手がライバルチームに移籍することによって、川崎と横浜の関係は本当の意味での"ダービー"へと昇華するだろう。
現在のJリーグには、いくつかのダービーやクラシコと呼ばれる試合が存在するが、伝統の一戦、因縁の一戦というよりも、単に同じ地域にあるクラブ同士の戦いというケースがほとんどだ。海外リーグのそれのように、いがみ合ったり一触即発といった雰囲気になることが理想とは言わないが、Jリーグのダービーやクラシコには熱量が足らないのも事実だ。
レアル・マドリードとバルセロナ、ボカ・ジュニアーズとリーベル・プレートなど、海外リーグで"禁断の移籍"が起きると、蜂の巣をつついたような騒ぎになる。Jリーグでも、今回の齋藤のように話題となる移籍が続いていくことを願う。移籍した選手自身やサポーターの感情は複雑だろうが、こうした移籍が活発になるほど、ダービーやクラシコが名実ともに熱を帯びるはずだ。
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