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浦和の命運がかかる大一番で下された、
エース・福田正博への非情采配 (2ページ目)

  • 佐藤 俊●取材・文 text by Sato Shun

 浦和は、90分以内での勝利が必須だったのだ。

「俺らには、90分間で勝つイメージしかなかった」

 当時を振り返って、福田はそう語る。浦和の選手たちは皆、その意識を共有していた。

 試合前、ミーティングで広島戦のスタメンが発表された。

 驚くことに、そこに福田の名前はなかった。チームが苦しい状況の中でゴールを決め、どん底にあったチームを浮上させた"エース"の名が、この大事な大一番になかったのだ。

重要な一戦にもかかわらず、「エース」の福田正博は先発から漏れた。photo by Yamazoe Toshio重要な一戦にもかかわらず、「エース」の福田正博は先発から漏れた。photo by Yamazoe Toshio

 福田がバスに乗り込んだとき、ベギリスタインに声をかけられた。

「フクダ、ケガをしているのか? どうしてスタメンじゃないんだ」

「俺にもわからない。理解できない」

 第11節のヴィッセル神戸戦で屈辱のベンチ外になった際、ペトロビッチに問われたときと同じ言葉を福田は繰り返すしかなかった。

 福田は、ベギリスタインのアシストでゴールを決めることが多かった。ベギリスタインもそのことをよく認識していて、最終戦でチームを勝たせるためには、福田の力が必要なことを誰よりもわかっていた。しかも、ベギリスタインはこの日が現役最後の試合だった。最高のパフォーマンスを発揮したかったにもかかわらず、前線に"ベストパートナー"がいないことは、どれほど不満に思ったことだろう。

 福田自身、ベギリスタインの気持ちは痛いほどわかっていた。現役最後の試合で、まして残留をかけた大事な試合である。そこで、一緒にプレーできないことに歯痒さを感じ、ベギリスタインに対して申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

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