6-1圧勝でも沈痛ムード。
前橋育英、悲願の日本一に向け完璧を期す

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 高橋学●撮影 photo by Takahashi Manabu

 1月6日、全国高校サッカー選手権の準決勝が行なわれ、前橋育英(群馬県)が上田西(長野県)を6-1で下し、決勝進出を果たした。昨年度の前回大会で準優勝に終わっている前橋育英にとっては、目標の日本一へまた一歩近づく圧勝である。

 ところが、前橋育英の山田耕介監督から聞かれたのは、結果に似つかわしくない意外な言葉だった。

「失点は本当に悔しい。たぶん、前半は(上田西のシュート数は)あのシュート1本だったと思う。選手はもっと悔しいのではないだろうか」

 山田監督が「昨年の決勝で青森山田に0-5で負けたのが出発点」と語るように、前橋育英の今年度のチームは、前回大会決勝で味わった大敗の屈辱を胸に刻み続けることで、強くなってきた。

 もちろん、1年という時間のなかではすべてが順調に進んだわけではなかったが、「勝っても、負けても、日本一という目標は変わらず持ち続けてきた」と、キャプテンのMF田部井涼(たべい・りょう/3年)は語る。

 そんな前橋育英が、日本一という目標を達成すべく、磨き上げてきたのがトランジション、すなわち攻守の切り替えだった。

 それは、対外試合ばかりでなく、普段の練習や紅白戦でも徹底されてきた。田部井涼は「監督が選手を見ているポイントもそこだと思う。それができていないと、トップチームには上がれない」と証言する。

 攻守の切り替えの速さで相手を圧倒する前橋育英にとって、無失点はひとつのバロメーターでもあったのだろう。だからこそ、県予選から続いていた無失点が途切れたことを、これほど悔しがるのである。

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