「もう戻れないと思った」森﨑和幸が、苦境のサンフレッチェを救う (3ページ目)

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 そうしたチームの窮地を救おうとするかのように、森﨑は全体練習に合流してわずか10日余りという5月3日のルヴァンカップ、対セレッソ大阪戦(0-1)で先発に復帰。さらに、中2日で行なわれたJ1第10節のヴィッセル神戸戦でも58分に途中出場した。

「(ヴィッセル戦では1−1の状況になり)森保(一)さんとコーチからは、ちょっと前がかりになりすぎているから、チームを落ち着かせてほしいと言われたので、そこを意識してプレーしました」

 ピッチに入った状況を、森﨑はそう振り返る。

 先制されながらも、52分にMFアンデルソン・ロペスのゴールで追いついたチームは、追加点を奪おうと攻撃姿勢を強めていた。対戦相手のヴィッセルもそれにつられ、ボールは行ったり来たりの流れになる。だが、ボランチに森﨑が入ると、空気が一変したかのように、その展開がピタッと止まった。

 記者席の隣で見ていた双子の弟・浩司が、「(森﨑)カズが適切なポジションを取ることで、周りも自然と適切なポジションが取れるようになっている」とつぶやく。

 ショートパスを用いながら森﨑がボールを動かしていくと、チームメイトもその動きに合わせてポジションを変えていく。相手がプレスに行こうとしても、テンポよくパスがつながっていくため、無闇に飛び込むことができない。また、後方でのボール回しに合わせるように、2列目も下がってボールを受けようとする動きが活発になり、中央から縦パスが入るようになった。

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