トップ公式戦初出場の久保建英に見る、メッシのデビュー戦との共通点 (4ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

 もっともFC東京にはチーム構造上、組織的な動きに鈍さがある。選手同士の距離が悪く、ラインが下がりすぎ、ビルドアップでノッキングを起こすこともしばしば。集団戦術が成熟していない。ルーキーがこの環境でいきなり入ってプレーするのは至難の業だろう。サポートに行ってもボールは出てこず、ボールを出そうとするとサポートがない。個人戦になりやすく、フィジカルの差が出てしまうのだ。

 久保は周りの選手と比べて、体格的な劣勢は明白だった。

 ただ、少年は極力、自分の欠点を隠そうとしていた。長所だけを出す、見せる。それも一流選手になる条件である。この日、彼はその"資格"を証明した。

 筆者は2004年10月、後に世界最高の選手となるリオネル・メッシのリーガエスパニョーラ、デビュー戦に遭遇したことがある。17歳だったメッシは、淡々としている印象だった。出発点に過ぎないとわきまえていたのか。忘れられないのが、当時の指揮官フランク・ライカールトの言葉だ。

「(デビューは)ギフトではない。レオ(メッシ)は単純にいい選手だから、今日はプレーした。ギフトを贈るなら、友人をプレーさせるさ。レオはこれから練習で、またいい選手であることを見せる。それだけの話だ」

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