美しくないサッカーでも勝つ。浦和ペトロヴィッチ監督が決断した瞬間 (3ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 その状況を回避するために、後半の浦和は安全策を選んだ。相手のサイドバックに対し、興梠とFW武藤雄樹の2シャドーをあてがい、槙野と森脇も攻撃参加を自重。安定感は高まったものの、ボールの奪いどころが後方に傾き、いわば受けてしまう状況に陥った。また、ボールを奪っても前の人数が不足し、浦和らしいパス回しを仕掛けられなかった。

「シャドーがついていくと、やっぱり全体が引いてしまう。そこが守備に回ってしまった原因かなと思います」

 興梠は苦戦の要因をこう語ったが、指揮官の消極采配が自らの首を絞めてしまったという見方もできる。もっとも、ペトロヴィッチ監督にも言い分はある。火曜日にACLで中国の強豪・上海上港とハードな戦いをこなしたことに加え、突如暑くなった気候にも言及し、「プロフェッショナルに3ポイントを奪いにいく戦いのなかで、しっかり勝利できた。我々が今日出せるベストを出せたゲームだったと言えるだろう」と試合を振り返っている。

 つまりは、ペトロヴィッチ監督はチーム状態を考えたうえで、現実路線を選んだということだ。これには、もうひとつ理由がある。かつての経験を踏まえ、指揮官は語る。

「日本ではほとんどの時間帯で試合を支配しても、一発のカウンターでやられてしまえば、まるで評価されない。今日のように美しくないサッカーでも勝利していく。そういう部分を考えながら、今季は戦っている」

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