名将が変えたヴェルディ。バルサっぽくないスタイルにJ1昇格の予感 (4ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • photo by Getty Images

「あの場面は1対1の状況になってしまったので、あそこは組織としてもう1回、突き詰めないといけない」

「組織」に加え、もうひとつキーワードを挙げるとすれば「リスクを冒さない」になるだろう。井林によれば、前から奪いに行くことを理想としながらも、相手や状況によっては引いて構えることも視野に入れている。

「無理に前から行くのではなく、状況に応じて引いて守るのは問題ないと言われている」と言うように、リスクを極力冒さない危機管理こそが、東京Vに守備の安定をもたらす要因となっているのだ。

 こうした臨機応変な判断は、攻撃に関しても同様だ。この日も最終ラインからしっかりつなごうという意識は見えた一方で、湘南のハイプレスを受けてボールが縦に入らないと見るや、リスクを回避してロングボールでシンプルに背後を突く戦いを選択。スペイン人監督が率いるとあって、ショートパスをベースとした「バルサ的」なスタイルをイメージしていたのだが、東京Vのサッカーは理想やこだわりを排除した「リアリズム」そのものだった。

 もっとも、守備に対する手応えを感じつつも、攻撃面はまだ発展途上にあると選手たちは自覚している。途中出場で試合の流れを変えた梶川は、今後の課題を口にする。

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