世界が感動した「キング・カズ、50歳のゴール」はこうして生まれた (3ページ目)

  • 浅田真樹●文 text by Asada Masaki
  • 梁川 剛●撮影 photo by Yanagawa Go

「(ゴールまでの)ラインが見えた。力みはなかった。あのくらいの振りでしっかり(ボールに)当たればスピードが出る。当てただけだが、かなり強いボールが打てた」

 ゴール前にいた相手DFの意識はイバに集中しており、ボールが目の前に転がってきたとき、カズは完全にフリー。シュートコースは狭く、決して簡単な場面ではなかったが、さすがは千両役者である。

 この試合で対戦した群馬の森下仁志監督も、「イバへのロングボールが相手のストロングポイントだということはわかっていた」。だからこそ、「受けて守るのではなく、前から(プレスに)行こうと思った」わけだが、これがカズにとっては幸いしたと言える。

 群馬は前線から積極的にボールを追いかけ回した。イバにボールを入れられてから対応するのではなく、簡単に入れさせないことを選んだ。

 この選択は、一定の成果を見せた。だが、一度プレスをかわされてしまうと、相応のリスクが待っているのは当然のこと。横浜FCはイバを中心とする前線にボールが収まってしまえば、比較的スペースがある状態で攻撃を進めることができた。

 また、「受け身にならず、主導権を握って戦う」(森下監督)ことを目指す群馬は、マイボールにしたあとも、短いパスをつないで攻撃を組み立てようとした。しかも、選手はただ足もとでパスをつなぐのではなく、かなり大胆にポジションチェンジを繰り返すことで、横浜FCの守備網に穴をあけようと試みたのだが、その分、ボールを失って守備に切り替わったときのバランスが悪くなり、簡単にカウンターを許すケースが多かった。

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