福田正博が指摘。ハリルホジッチに欠けていた「代表監督に必要な資質」 (6ページ目)

  • 津金一郎●構成 text by Tsugane Ichiro
  • photo by Matsuoka Kenzaburo

 この2戦を振り返って収穫だったのは、原口元気と浅野拓磨だろう。ふたりがゴールを決めたからだけではなく、原口と浅野がピッチに立つことでチームにもたらす「躍動感」は貴重なものだからだ。彼らはまだまだプレーの粗さが目立ち、ともすると雑にも見える。しかし、言い方を変えれば、それは「荒々しさ」や「推進力」ということでもあり、今の日本代表に欠けている要素だ。彼らは車にたとえれば、アクセル。ベテランが増えてブレーキ役になる選手が多い日本代表にとって、アクセルになれる若手はまだまだ少ないといえる。

 もちろん、若いからといって誰もがアクセルになれるわけではない。たとえば大島などは、若いがブレーキ役の選手だ。チーム全体を見渡し、バランスを取れる。それに対して、原口や浅野は、縦横無尽に突っ走る反面、チームのバランスを崩す動きになることもあるが、こうした動きこそがチームに勢いを与えることにもなる。

 チームの躍動感は、バランスをとる選手ばかりでは生まれない。若手が遮二無二プレーするからこそ、ブレーキとなるベテランの存在意義も増す。若手のプレーは危なっかしい部分も併せ持つが、そこは長谷部ら経験豊富な選手がブレーキをかければいいだけのこと。若手にはアグレッシブなプレーを期待したい。

 私自身は、ハリルホジッチ監督の目指す「縦に速いサッカー」は世界の強豪と戦う時に生きてくると思っている。世界の舞台でその良さを発揮するためにも、まずは謙虚にアジアでの戦い方を研究し、10月ラウンドからは、この2試合で得た教訓を十分に生かしてもらいたい。

津金一郎/構成

【福田正博 フォーメーション進化論】コラム一覧>

プロフィール

  • 福田正博

    福田正博 (ふくだ・まさひろ)

    1966年12月27日生まれ。神奈川県出身。中央大学卒業後、1989年に三菱(現浦和レッズ)に入団。Jリーグスタート時から浦和の中心選手として活躍した「ミスター・レッズ」。1995年に50試合で32ゴールを挙げ、日本人初のJリーグ得点王。Jリーグ通算228試合、93得点。日本代表では、45試合で9ゴールを記録。2002年に現役引退後、解説者として各種メディアで活動。2008~10年は浦和のコーチも務めている。

6 / 6

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る