鳥栖にタイトルを――好待遇の移籍を断った豊田陽平の思いは届くか (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 その一方、チームの試みと成長に手応えも感じているようだった。

「つないでいこうとする意識が高くなっているのは、ポジティブなこと。それは、(指揮官が)マッシモになってから徹底的にやってきたことです。簡単に蹴っていたところをつなぐことで時間を作ったり、ひと呼吸置いたり、できるようになってきました。ただ、まだ効果的ではないときがあります。本当なら長いボールを入れたらチャンスなのに、後ろや横のパスでその機会を逃したりして。判断力やしたたかさを身につける必要がありますね」

 セカンドステージで勝ち星が先行するようになった理由、それは継続こそ力なりといったところか。

 イタリア人指揮官が率いる鳥栖は開幕以来、4-3-1-2の布陣でゾーンディフェンスに挑戦してきた。しかし、ゾーンは連係の高さと機敏さが欠かせず、ファーストステージは綻(ほころ)びを突かれることもしばしばだった。そして、ポゼッションを追求しつつ、カウンター確立を目指すも、判断に迷いが出ていた。

「ミスすることを怖がらず、縦にパスが入ってくると、ひとつひとつのプレーがもっと有効になってくるはずですが......」

 豊田はそう明かしていたが、MF水沼宏太(→FC東京)、MF藤田直之(→ヴィッセル神戸)という配球役のふたりが移籍し、得点パターンの構築にも苦しんでいた。

 だが、セカンドステージはタイミングが合う機会が増えた。第10節のアルビレックス新潟戦、敵のパスミスを拾ったMF福田晃斗がダイレクトで豊田に入れた縦パスはそのひとつだろう。エースが持ち込み、1-0で接戦を制した。

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