小倉新監督よ、下を向くな。ベンゲル時代を想起させるグランパス (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki photo by AFLO

 欧州ではプレッシングの定番布陣として通っていた中盤フラット型の4−4−2。だが当時、日本にその文化は入ってきていなかった。同じ頃、代表チームの監督を務めていた加茂周氏が採用していた布陣は中盤ボックス型の4−4−2。4分割表記にすれば4−2−2−2。ブラジル式の非プレッシングスタイルで、プレッシングサッカーに臨もうとしていた。

 その矛盾を一目瞭然にしたのがベンゲルのサッカーだった。「プレス!」と監督が大声で叫んでも掛かりの悪い日本代表と、監督が何も叫ばずとも自ずと掛かる仕組みになっていた名古屋。当時の名古屋は、それほど進歩的なサッカーをしていた。

 それから20年経つが、日本のサッカー界でプレッシングをきちっと決めるチームは少ない。Jクラブ、代表チームともに、だ。5バックで引いて守ろうとする割合がここまで高い国も珍しい。オーソドックスな4バックを採用するチームでも、気がつけば4−2−2−2的になっている。

 ポジションをカバーする概念が低いことが、その最大の原因だ。流動的という名のもとに、選手は勝手に動き回ってしまう。集団性の低いサッカーに陥りがちだが、小倉新監督率いる名古屋に、そうした日本の悪しき風習は見られない。集団性の高いサッカーで、プレッシングを追求しようとしている様子が目に止まる。集団美さえ感じさせるほどだ。

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