あえなくJ2降格も、松本山雅にとって「価値ある1年」 (3ページ目)

  • 浅田真樹●文 text by Asada Masaki
  • photo by Etsuo Hara/Getty Images

 反町監督は、MFキム・ボギョン、DF安藤淳ら、シーズン途中に加わった新戦力の名前を挙げ、「ボールが収まり、(攻撃する)時間が作れるようになった」と振り返る。実際、神戸戦の後半を見ても、出足で上回ってボールを奪い、奪い返しに来る神戸の選手を巧みなパスワークでかわして攻め込む場面が再三見られた。

 今のチーム状態でシーズン開幕を迎えていれば、違う結果になっていたのではないか――。そんなことを尋ねると、反町監督は「新しい選手が入ってきてよくなったし、それを最初からやっていればもっと強固なチームができたと思う。だけど、それがクラブの力だから。そこに文句を言っても仕方がない」と結果を受け入れ、負け惜しみを口にすることはなかった。

 反町監督の言葉どおり、結果に関わるすべての問題は、選手や監督だけで解決できるわけではない。そこでは、いわば「クラブの総合力」が問われている。だからこそ、百戦錬磨の指揮官はこう続ける。

「経験のある選手を獲得してくるというやり方もあるだろうし、育成型のクラブを目指すというやり方もある。どこを目指すにしても、クラブ全体としてこれからどうするかをしっかりと考えなきゃいけない。整備しなければいけないところはたくさんあるし、その場しのぎでは同じことの繰り返しになってしまう。こうやって降格しても、もしかしたら1年でまた戻れるだろうって思っている人もいるかもしれない。でも、そんなに甘いもんじゃない。自分自身、湘南で監督をしていたときにそれを味わったし()、よくわかっている。それをみんなが認識しなきゃいけない」
※反町監督は2009年からJ2の湘南を指揮。2010年にJ1昇格を果たすも、18位という結果に終わって1年でJ2に降格。翌2011年は即J1復帰が期待されたが、J2で14位と低迷した。

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