増えたJリーガー。トライアウトの意味にも変化が (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 兼子愼一郎●写真 photo by Kaneko Shinichiro

 この日のトライアウトには、74名(うちGKが8名)の選手たちが参加している。平均年齢は25.8歳。これは図らずもJリーガーの平均引退年に近い。J1はまだ全日程を終えていないので、ほとんどがJ2とJ3の選手で構成。全国的に知名度の高い選手はいなかったが、横浜F・マリノスなどに在籍した榎本達也などJ1経験者も少なからずいた。最年少選手は、東南アジア枠で参加したタイのU-19代表スックシュアイ(18)だった。

 まずは隣接したグラウンドで7対7。100人以上の関係者が熱心に見守る中での7対7は異様だが、その緊張を乗り越えられないと、数千、数万人の観客の前でプレイを見せつけることもできないのだろう。

「きちー!」

 選手の吠える声が響く。体力的にいきなり高いテンションで戦わざるを得ないので、息が上がるのだ。

 その後はスタジアムに戻り、11対11のゲームを30分間ずつ戦う。午前の部、午後の部で、10チームを構成して、5本のゲームが行なわれた。

 その1本目のゲーム。Aチームで出場したJ3ガイナーレ鳥取の奥山泰裕は、右サイドから自慢の走力を生かして何度かDFを脅かしていた。裏に抜けたボールに相手DFより速くタッチしてカットインに成功、そのまま切り込もうとしたときに遅れて入ったタックルが左足首に入り、もんどり打って倒れる。惜しくもペナルティエリアの外だったが、アピールには十分だった。

 しかし奥山は左足首を捻挫、その後も無理してピッチに立ったものの、痛みに耐えきれずに交代を申し出た。

「"やれるぞ"という姿だけは見せられたと思います」と奥山は左足を少し引きずりながらも満足げに語った。

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