ベスト16敗退も、U-17が示した「世界との戦い方」 (2ページ目)

  • 浅田真樹●文 text by Asada Masaki 赤木真二●写真 photo by Akagi Shinji

 もちろん、吉武監督にしても、個の力を伸ばす必要性は認識している。だが、ベースにあるのは、「いつでもどこでも数的優位、というのは物理的に不可能だろうと思われている。でも、挑戦したい」という考え方だ。「だから、(自分たちの攻撃にとって)有利なところにボールを回したいし、(自分たちの守備にとって)有利なところに相手にボールを回させたい。それによって必ず、数的優位で進めたい」と、チームのコンセプトを吉武監督は語る。

 フィジカルコンタクトやハイプレッシャーに弱いという(このチームに限らず、日本全体の)欠点についても、「相手のプレッシャーが激しいほど、その裏にはスペースができているわけなので、プレッシャーが来る前に誰かが(サポートに)ひとりついて、そこを速く突いたほうがいい」といった具合だ。

 吉武監督は、ボールポゼッションにも徹底的にこだわった。

 自らがボールを保持し続ける限りにおいては、高さがなくとも、ぶつかり合いに弱くとも関係ない。マイボールでさえあれば、失点する可能性はゼロになるからだ。と同時に、それこそが日本の長所――小柄で俊敏で技術に優れたMFが人材豊富なこと――を生かす術(すべ)であり、ときに、DFラインに本職がMFの選手をずらりと並べたのも、そのためだ。

 現実には、今大会でもカウンターからいくつか失点しているわけだが、指揮官の視点に立てば、ゴールを許した守備を嘆(なげ)くのではなく、「問題はボールを失ったことにある」ということになる。現代サッカーにおいてボールポゼッション率が65パーセントに達すれば、かなり一方的な印象の試合になるなかで、「80パーセントくらいを目指してやれたらいい」と吉武監督。さらには、こうも言っている。

「守って、守って、0対0というのはやりたくない。ずっとボールを保持して0対0だったら、我々が目指している方向かなとは思う」

 カウタンーから2失点し、1-2で敗れたスウェーデン戦でも、パスをつなぐばかりで攻めあぐねるもどかしい場面は確かにあった。シュートを打たなければ、得点はできない。サッカーはパスの本数を競う競技ではない。そんな意見が聞こえてきそうな場面である。

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