プロサッカーチームの監督が選手と接するときの心得 (2ページ目)

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 実際、オシムさんはジェフの監督時代、多くの若手にチャンスを与え、その選手がミスをするとすぐに交代させることが何回かあった。そして、試合後にこう言っていた。「彼はたぶん気がついただろう。私が何も言わなくても、なぜ自分が代えられたか分かっているはずだ」と。そして、次の試合で再びチャンスを与えていた。

 選手にしてみれば、前半に交代させられることはショックなこと。だからこそ、監督はすぐに次のチャンスを与えるべきだろう。もしチャンスを与えなかったら、この選手はモチベーションを失ってしまう危険性もあるからだ。

 あるいは、ベテランがスランプに陥った時に、あえてベンチに下げて外からチームを俯瞰させるという考え方もある。ただ、それもその選手が心理的、肉体的にどういう状況なのかを把握したうえで、監督が考えて決断をしなくてはいけない。

 また、選手の1試合の走行距離、スプリントの回数などの客観的なデータも監督にとって重要な情報のひとつだ。ミーティングなどで選手を納得させるため、あるいは選手のパフォーマンスをチェックするために、データを活用することもある。データが蓄積されていくと、選手のコンディションの善し悪しを判断する材料にもなる。

 レギュラーを先発から外す時に、客観的なデータをもとに論理的に説明できるという利点もある。先発から外されたら、選手は納得できないもの。「俺は調子がいい」と反論したくもなる。そうしたときに、選手を説得する手段のひとつとしてデータを持っていれば、それを見せて、「今、君は疲れているようだから次の試合は休んでもらう」と伝えることができる。

 もちろん、監督が、その選手のコンディションがよさそうだと思っても、データではそうでない時もあるだろう。その場合、起用するかどうかの決断は、最後は監督次第。数字だけを頭に入れて、データばかり気にしていると、見誤る可能性があることもわかっていなければいけない。いずれにしても、判断をするためには、ひとつでも多くの情報が必要ということだ。

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