狙うは代表とW杯。
「這い上がってきた男」豊田陽平の野望

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki photo by YUTAKA/AFLO SPORT

今季ここまで6ゴールを決め、J1得点ランクトップの豊田陽平(鳥栖)今季ここまで6ゴールを決め、J1得点ランクトップの豊田陽平(鳥栖) サガン鳥栖のFW豊田陽平は、敵ゴール近くで傑出した存在感を見せる。

 星稜高校時代のスポーツテストで、あの松井秀喜を上回ったという身体能力は伊達ではない。身長185cm、体重79kgの大柄な体躯、異常に発達したふくらはぎと屈強な背筋は驚異的な跳躍を生み出し、体幹が強いことで当たられてもビクともせず。巨漢のわりには動きが軽快でダッシュ力に長け、またプレッシングでは"二度追い"できる持久力も兼ね備える。

 なにより、得点への執着と狡猾さは特筆に値するだろう。覇気を漲(みなぎ)らせてゴール前に飛び込んだかと思えば、するりとマーカーの視野から外れてから入れ替わり、シュートチャンスを作ってしまう。実はパワーやスピードよりも、マークを外す緻密な動きが彼のゴールを生み出している。

 3月に開幕したJリーグ、豊田は5節終了現在で6得点を記録。右足、左足、ヘディング、体のすべての部位を使ってボールをゴールネットに放り込み、横浜F・マリノスのFWマルキーニョスと並んでゴールランキング首位に立っている。戦力的に恵まれているとは言えない鳥栖において、昨季の19得点(J1得点ランキング2位)に続くゴール量産は瞠目に値する。

「自分は、ひとつのクラブに在籍したのは3シーズンが最高で、4シーズン以上は今季が初めてのことなんです。だからこそ、"お世話になった鳥栖をもっと強くしたい"というのはありますよ。このクラブは過去に消滅しかけたこともあるし、その歴史の中で自分も生きている。それは常に忘れず思っていますからね」

 鳥栖のストライカーとしての矜持を、豊田は語っている。

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