【Jリーグ】ポジティブなサプライズ。
鳥栖が躍進した要因は何だったのか? (2ページ目)
「何かひとつ挙げるのは難しいが、選手の意識改革ができたことと、目的意識をしっかり持って前進し続けられたことが、この結果につながったのだと思う」
指揮官が口にした「意識の変化」に納得するように、キャプテンのMF藤田直之はシーズンをこう振り返る。
「降格候補に挙げられるようなところからのスタートだったが、チーム力では劣っていないと思っていた。雰囲気のいいなかで年間通してやってこられたし、選手一人ひとりがJ2からJ1に舞台が上がったことで、モチベーションが上がった。高いモチベーションを持ったなかでチャレンジ精神を発揮すれば、多少の技術の差は埋められる」
鳥栖は昨季J2の2位でJ1に上がってきた。いわば、今季は下位からのスタート。降格候補と見られるのも当然のなりゆきだった。
ところが、開幕から大きな落ち込みもなく順調に勝ち点を積み重ねた結果、ほとんど降格の危機に脅えることなく初のJ1シーズンを乗り切った。MF水沼宏太は言う。
「J1残留うんぬんではなく、一戦一戦、気持ちを入れて気を抜かないで戦ってきた。気を抜くとやられる相手ばかりだから。そのなかでチームの規律を守ってやってきた結果だと思う」
19ゴールで得点ランク2位となった、FW豊田陽平という切り札を持っていたことも大きかった。長身の豊田めがけてロングボールを放り込み、セカンドボールを拾って一気に攻め込む。ときにはそんな"キック・アンド・ラッシュ"に徹することも、いとわなかった。ボールポゼッションを重視したパスサッカー全盛の時代にあって、割り切った戦い方を選択できる強みは異彩を放っていた。
こうやると決めたら、チーム全員が一丸となって取り組むことができる。藤田が「尹さんが監督になって3年目。ブレずに目指すサッカーをやってこられたから、(他のクラブより)チーム力で勝れた」と話した通り、多くの選手が躍進の要因として口にしたのが、「チーム力」という言葉だった。
水沼は「過去最高の5位で終わったことには胸を張りたいし、『鳥栖の名前を全国に広める』というつもりでやってきて、鳥栖のチーム力は全国の人に見せられた」と言い、豊田もまた、「納得はしていないが、予想を裏切れたという点では少しは評価してもらえるのではないか。チームとして戦うというところは自信になった」と話す。
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