【Jリーグ】J1初優勝を飾った、広島・森﨑和幸を苦しめてきた「病」

  • 原田大輔●文 text by Harada Daisuke
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

ピッチの上だけでなく、「難病」とも戦い続けてきた森﨑和幸。ピッチの上だけでなく、「難病」とも戦い続けてきた森﨑和幸。森﨑和幸(サンフレッチェ広島)
難病を乗り越えて手にした栄冠(前編)

見事J1リーグ初優勝を成し遂げたサンフレッチェ広島。その立役者のひとり、森﨑和幸は長年"病"に悩まされてきた。それが原因で、何度となくサッカーを辞めようと思った。しかし彼は、その苦難を乗り越えて、ついに栄光を手にした。そんな森﨑和幸の、壮絶な"サッカー人生"を綴る――。

 クラブ史上初となるJ1優勝が決まった瞬間、サンフレッチェ広島森﨑和幸は握りしめた拳を高らかに掲げていた。

「最初は信じられませんでした。本当に(優勝が)決まったのかって、疑っているもうひとりの自分がいた。でも、次第に感情が込み上げてきて、なんとも言えない喜びに変わりました」

 自然と涙があふれてくる。双子の弟・森﨑浩司をはじめ、次々に歓喜するチームメイトと抱き合う中で、これまでのキャリアがフラッシュバックしていった。

「泣きましたね。優勝した瞬間、これまでの苦しかったことを思い出しましたから。個人としてもチームとしても二度のJ2降格を経験したこと。これまで天皇杯で2回、ナビスコカップで1回、決勝まで進んだけど、優勝することができなかったこと。今いる選手の中では唯一、その3回とも試合に出ていて、そのたびごとに『自分に責任があるのかもしれないな』と考えたりしたこともありました。今までの、そうした苦しいことが思い起こされて、涙が止まらなかったですね」

 広島で生まれ育ち、サンフレッチェ広島でずっとプレイしてきた和幸は、これまでピッチで戦いながら、実は自分自身の病気とも戦ってきた。

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