【名波浩の視点】グランパス、価値ある一勝。膨らんだ逆転優勝の可能性

  • 渡辺航滋●撮影 photo by Watanabe Koji

本職のセンターバックに戻って、チームの勝利に貢献した闘莉王(写真左)。本職のセンターバックに戻って、チームの勝利に貢献した闘莉王(写真左)。 1節終えるごとに順位が目まぐるしく入れ替わる大混戦のJリーグ。第23節では勝ち点32で並ぶ、川崎フロンターレ(10位)と名古屋グランパス(9位)が対戦。試合は1-0でグランパスが勝利し、優勝争いに生き残るための貴重な勝ち点3をもぎ取った。

 一昨年の覇者で、昨季は優勝した柏レイソルを追い詰めたグランパス。今季も優勝候補の一角に挙げられていたが、今年はAFCチャンピオンズリーグ敗退後もリーグ戦での勝ち星が伸びずに停滞している。その原因のひとつは、やはり負傷者の続出だろう。それも、軽い捻挫や筋肉系の軽症ではなく、長い間戦列を離れる主力選手が多く出たことがチーム力の低下につながった。

 加えて、永井謙佑がロンドン五輪で不在になると、攻撃陣は完全に駒不足となった。その間、闘莉王をFWで起用して穴埋めを図ったものの、19節では最下位のコンサドーレ札幌に苦杯を舐め、21節の清水エスパルス戦でも2-3で敗れた。そして、闘莉王が出場停止となった前節のガンバ大阪戦では0-5と大敗。今季3度目の連敗を喫し、グランパスらしくない戦いが続いていた。

 そんな苦しい状況の中、フロンターレ戦では増川隆洋とダニエルというふたりのDFまで出場停止で欠いて、一層厳しい事態に追い込まれていた。それでも、この日はコーチングスタッフ、選手それぞれが、チームを改善させていかなければいけない、という思いを前面に出した戦いを披露。危ないシーンを何度も迎えながら、誰もが90分間を通して守備の意識を高く持って、相手の攻撃をしのいだ。

 特に素晴らしかったのは、本職のセンターバックに戻ってきた闘莉王だ。

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