【Jリーグ】石川直宏「ポポヴィッチ監督の言葉に本能を刺激された」
輝きを取り戻した男
FC東京・石川直宏インタビュー(前編)
今季はJ1の8クラブが新監督を迎え、新たな体制となった。それにより、一時の低迷から抜け出し、再度躍動し始めた選手が何人かいる。FC東京の石川直宏もそのひとりだ。ここ数年はやや影が薄い印象だったものの、ポポヴィッチ監督が標榜するサッカーのもと、大いに存在感をアピール。鋭い飛び出しと持ち前のドリブル突破で数多くのチャンスを作っているが、彼はなぜ、再び輝くことができたのだろうか――。
「30%増しだ。今持っている能力よりも、あと30%上乗せしてやる。お前の力はこんなものではない」
ポポヴィッチ監督に目を見つめられたまま言われると、石川直宏は肌が粟立つのがわかった。血流が速くなる。気力が満ちる。熱を帯びた言葉がサッカー選手としての本能に届いた。
「選手は単純な生き物なんで、そう言われるとモチベーションが上がるし、やる気になるものなんですよ」
石川は凛々(りり)しさと親しみやすさが同居した笑みをこぼしながら説明する。
「2009年の終わり頃から、力をうまく抜きながらプレイすることも覚え、"ベテランの領域に入ったのかな"と思い始めていました。でも、ポポヴィッチ監督は『こんなものではない』と言ってくれた。それで、本能を刺激されたというか、"もっと荒々しくプレイしていいんじゃないかな"と思うようになったんです」
2012シーズン、プロ13年目の石川は野性を取り戻した――。
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