【名波浩の視点】今季初勝利を飾ったF・マリノスはこの1勝で変わるか? (2ページ目)

  • 小内慎司●撮影 photo by Kouchi Shinji

 前節のジュビロ磐田戦でも、すごくいいサッカーを展開し「なんで、これで勝てないんだろう」という内容だった。シュート数も、ジュビロ6本に対して、F・マリノスは倍の13本も放っていた。それなのに勝ち切れないのは、チームがそうした重い雰囲気に包まれていたせいで、自分も現役時代に経験したけれども、点がとれないと、より確実性の高いプレイを求めてしまうからだ。すなはち、ヴィッセル戦前半の問題点として指摘したように、皆がセーフティーにプレイして、ゴールがますます遠のいていた。

 加えて、ケガ人も多く、選手の出入りが激しかったという。そうした負の連鎖もあって、結果が出なかったように思う。

 しかしそれも、この1勝で払拭されるのではないだろうか。なにしろ、もともと個の力はある。そこに組織力とメンタリティーがプラスされて、選手全員にそれが浸透すれば、この日のような戦いができるのがわかった。選手たちも自信を持つだろうし、これまでがどん底だと思えば、これから物事もポジティブに考えられるようになり、このまま結果を出し続けていけると思う。

 それを現実にするために、さらに何かを求めるとするならば、まずはゴールへの意識が高い大黒将志の守備負担を減らしたい。彼が前線でパワフルに動き回っているのは評価できるけれども、今は彼の許容範囲を越えた守備の仕事をがんばっている。だが、それ以上に「点を取る仕事もやりたい」という欲求もあって、フラストレーションを感じながらプレイしているように見える。その辺は、彼自身の課題でもあるが、周囲も彼にそこまでのディフェンスをさせないような守備の責任を、それぞれの選手が持つべきではないかと思う。

 もうひとつは、F・マリノスがボールを動かすうえで、起点になるのは中村俊輔なのだけれども、ヴィッセル戦の立ち上がりでも潰されることが多かった。つまり、F・マリノスのボールの出所はどのチームもわかっているので、それを回避するための工夫が必要。俊輔自身、人を使いながらワンクッション入れて、自分のマークをはがすプレイをもっと心掛けてほしい。その技術は持っているわけだから、常にそれを頭に入れておくことが大事だと思う。

 それに伴って、周りの選手も俊輔のプレイを常に意識するべきだろう。俊輔がワンクッション入れるために、そのクッションとなる選手が、俊輔のプレイを感じて、顔を出すタイミングをもう少しうまく図ってあげることが大切になるのではないだろうか。

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