【高校選手権】大会を彩った、「荒削り」だからこそ将来が楽しみな逸材たち
今大会最も注目を集めた桐生第一の鈴木武蔵。まだまだ荒削りな部分は多いが、将来を嘱望されるFWのひとりだ。 1月7日、全国高校サッカー選手権大会の準決勝が行なわれ、市立船橋と四日市中央工が決勝へ駒を進めた。サッカーファンにはお馴染みの、名門対決の実現である。
このところ、3年連続で初の決勝進出校同士の対戦となっていただけに、伝統校同士の顔合わせは高校サッカー界の新たな変化の訪れだと言いたいところだが、この10年ほど、基本的な流れは変わっていない。早い話が、Jクラブのユースチームに優れた人材が流れるようになり、高校のチームが小粒になっているのだ。
昨年は高校3年生世代が、いわゆる「プラチナ世代」に当たり、柴崎岳(青森山田→鹿島)、小島秀仁(前橋育英→浦和)、宮市亮(中京大中京→アーセナル)など、優れた選手が大会を彩ったことを思うと、今年の大会は、なお小粒な印象が強くなる。
とはいえ、その中にもタレントはいるものだ。
大会前、最も注目を集めていたのが、白崎凌兵(山梨学院)。複数のJクラブが争奪戦を繰り広げた末にJ1清水入りが内定した白崎は、今大会では飛び抜けた存在と見られ、その活躍が期待されていた。
しかし、結果は初戦(2回戦)敗退。自身もノーゴールに終わり、今大会に限って言えば、本来の能力を示すことなく終わったのは残念だった。
そんな白崎に代わって、大会ナンバー1の注目を集めたのが、鈴木武蔵(桐生第一)である。
昨年のU-17W杯に出場し、すでにJ1新潟入りが内定。初戦(2回戦)のハットトリックを含め、全3試合で4ゴールを叩き出し、初出場のチームをベスト8に導いた。
だが、注目すべきはそうした肩書きや数字よりも、秘めたる潜在能力の高さ。まだまだ技術的には拙(つたな)さも目立つが、懐(ふところ)の深い切り返しやDFを置き去りにするスピードなど、ジャマイカ人の父譲りの高い身体能力は実に魅力的だ。シュートにもパンチ力があり、強烈なシュートが放たれる度にスタンドまで響く「ボムッ!」という衝撃音に、大会中、観客からは何度も嘆息が漏れていた。
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