元なでしこジャパン阪口夢穂が語る、運送会社社長業のリアルすぎる裏側「連帯保証人は全部、私です」 (2ページ目)
【社長として背負う責任と覚悟】
「代表取締役っぽい仕事といえば?」と半分冗談で突っ込むと、阪口さんは、ふと表情を変えてこう切り出した。
「銀行とのやり取りは私です。銀行と言えば、お金の貸し借りしかないですよね、業界的にも(笑)。これが、重いんです!」
運送業は車両への投資額が大きく、資金繰りが経営に直結する業界だ。家族経営ということもあり、その責任のすべてが阪口さんの肩にのしかかっている。
「小さい会社なので、連帯保証人は全部社長、つまり私が入っているんです。会社が潰れる時は、私も共倒れです」
淡々と、しかしはっきりと語られたそのひと言に、彼女の覚悟がハッキリと見える。
「いろいろ背負っています。個人で動くお金とは、ちょっと桁が違いますからね。タンクローリー1台、3,000万円くらいしますから......まあ、全然代表取締役っぽくないんですけど(笑)」
経営者になって、初めて実感したという税金の話も飛び出した。
「税金って、ものすごいカラクリですよね。ちょっと誤解を生むかもしれないですけど、『これが減税されたけど、ここで上がっている!』みたいな感じです(笑)。会社員だと年金や社会保険が引かれてちょっと落ち込むだけですけど、経営する側になると、『従業員から引いた分を、経営側が払いに行かないといけない』とか、『消費税ってこうやって払うんや』とか、初めて仕組みがわかるようになった。経営側になって、『会社ってこんなことまでやってくれてたんや』というのが見えてきました」
「やっと代表取締役と話している実感が湧いてきました」と伝えると、阪口さんは即座に否定した。
「いや、それはないです(笑)。とにかく『従業員ファースト』です。『働いていただいている』というマインドしかないです。やっぱり従業員のみなさんの幸せを考えないと。うち(経営側)だけがよくてもダメなので。小さいお子さんを持つ従業員さんもいるので、とにかくお給料を滞りなく渡せるように頑張っています(笑)」
軽やかな笑いのトーンのなかに時折、経営者としての言葉が混じる。今までとは異なる立場を背負いながらも、口をついて出るのは自分のことではなく従業員の生活。サッカー時代、チームの中盤でバランスを取り続けてきた阪口さんの姿と、どこか重なって見える。
「全然代表取締役っぽくない」と本人は謙遜するが、銀行対応、従業員への責任----そのどれもが、紛れもなく経営者としての仕事だ。
一見、今の仕事と関係なさそうな資格もありながら、そこにはどんな本音が隠されているのか。決算書が読めるようになった簿記の話、税金の仕組みに触れて知った経営者としての気づき、そして家族のなかで果たしてきた「バランサー」としての役割や、弟への事業承継への想いまで----。
後編では、阪口さんのキャラクターがさらに全開になる、資格取得の裏側と経営者としての本音に迫る。
後編>>サッカーで培われた阪口夢穂の社長力
Profile
阪口夢穂(さかぐち・みずほ)
1987年10月15日生まれ。大阪府堺市出身。
スペランツァF.C.高槻→FC ヴィトーリア→TASAKIペルーレFC→FCインディアナ(アメリカ)→アルビレックス新潟L→日テレ・東京ヴェルディベレーザ→大宮アルディージャVENTUS(現RB大宮アルディージャWOMEN)
日本代表としては、ワールドカップに4大会、五輪に2大会出場している。2011年のドイツW杯で初優勝を経験し、翌年のロンドン五輪では全試合に出場し、準優勝に貢献。2015年のカナダW杯でも準優勝という結果を残した。2022年に引退し、2023年からは家業を継いでいる。
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