サッカー日本代表のチュニジア戦勝利の立役者 上田綺世のストライカーとしての原点とは (3ページ目)
「(小さい頃は)父親に認めてほしかった、褒められたかったですね。ボールを思いきり蹴って、『キック力ついたな』と言ってほしかったり、父が蹴って大きくなったキックに追いついて、『足が速くなったな』と言われてうれしかったり。父の影響は強いです」
小1のとき、父がプレーする社会人リーグの試合を観戦した。フォワードとしてプレーする父は、そこでハットトリックの大活躍だった。ピッチに立つ姿が眩しく、とにかく格好よかったという。カテゴリーや舞台は関係なく、ゴールで輝く姿に痺れた。
<父のようになりたい>
そう思って始めたサッカーだったが、当初は意外にも要領を得なかったという。行きかうボールを追いかけるだけで、面白さを感じられなかった。
「おまえ、審判やってんのか?」
チームのコーチに入っていた父からは、厳しく言われたという。最初はまともにボールに触れられなかったのだ。
それが、2カ月後に転機が訪れた。試合でロングシュートを決めたのである。"これがサッカーなんだ!"という激しく胸を揺さぶる感慨があったという。
「ようやく達成した1点でしたが、"これをまた追い求めたいな"と思いました。そこを目指すようになったら、練習も(やるべきことが)はっきりしてきたんです。自分にとって、サッカーは点を取らないとつまらない。点を取らないポジションならやりたくない、と思いました」
それは、ひとりのストライカーの誕生の瞬間だった。その純粋な思いが、最高の舞台での今回の姿に結びついているとすれば―――上田のストライカーとしての物語は、これからひとつのチャプターのクライマックスを迎えるはずだ。
著者プロフィール

小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。
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