【女子サッカー】なでしこジャパンが長く抱えるフィジカルの差 なぜアメリカ代表はアスリート能力の高い選手が揃うのか (3ページ目)
【アスリートがサッカーを選ぶ】
どうして、中国やアメリカはそれほどアスリート能力が高い選手に恵まれていたのだろうか?
理由は、両国でまったく違う。
中国の場合は、政府が国威発揚のためにスポーツに力を入れている。しかし、たとえば男子サッカーのように世界中で行なわれている競技では、どれほど資金を投入してもタイトル獲得は難しい。だが、1980年代から1990年代にかけては、女子サッカーに力を入れている国は少なかったから、すぐにメダルを狙うことができた。
そこで、そういう競技を重点的に強化したのだ。そのため、たとえば陸上競技で足の速い選手とかバスケットボールの長身選手を選抜して、サッカーで代表を目指すように転向させた。
だから、アスリート能力の高い女性たちが女子サッカー選手となった。
アメリカの場合は、もちろんどんな競技に携わるかは選手たちの自由意志だ。そして、アメリカではサッカーは女子スポーツのなかで重要な地位を占めていたし、現在も占めている。
1990年代まで、アメリカではサッカーはアメリカン・フットボールやベースボールなどには遠く及ばないマイナーな存在で、"移民たちのスポーツ"と見なされていた。
だが、アメリカン・フットボールはマッチョで危険なスポーツなので、女子の競技人口はほとんどなかった。その代わり、サッカーは"女子でもできるフットボール"だったのだ。
筆者は、かつて横浜にあったアメリカ人学生向けの学校に勤務していたことがある。全米の大学院で日本研究を目指す学生が選抜されて1年間送り込まれて、日本語などを学ぶのだ。
そこで、学生たちが「男女が一緒にスポーツをやろう」ということになると、必ず「じゃあ、サッカーだね」という結論になるのだ。
だから、アメリカでは最もアスリート能力に優れた女性たちがサッカーを目指したのだ。
日本も、女子サッカー人口は少しずつではあるが拡大し、年代別代表にはフィジカル能力の高い選手も増えてきている。いつの日か、日本の女子代表がフィジカルの差を感じずに戦える時代が来ることを期待したい。
著者プロフィール
後藤健生 (ごとう・たけお)
1952年、東京都生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。1964年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、1974年西ドイツW杯以来ワールドカップはすべて現地観戦。カタール大会では29試合を観戦した。2025年、生涯観戦試合数は7700試合を超えた。主な著書に『日本サッカー史――日本代表の90年』(2007年、双葉社)、『国立競技場の100年――明治神宮外苑から見る日本の近代スポーツ』(2013年、ミネルヴァ書房)、『森保ジャパン 世界で勝つための条件―日本代表監督論』(2019年、NHK出版新書)など。
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