検索

サッカー日本代表が対戦する韓国代表のいま ワールドカップ予選無敗突破と監督不正就任騒動 (3ページ目)

  • 吉崎エイジーニョ●取材・文 text by Yoshizaki Eijinho

【ホン・ミョンボ監督不正就任疑惑】

 一方で、いまのホン・ミョンボ監督率いるチームと韓国サッカー界を取り巻く環境において、無視できない要素がある。

「監督不正就任疑惑」

 2024年7月に韓国代表監督に就任したホン・ミョンボ。その選定課程について、大韓サッカー協会の不正が指摘された。「強化委員会の承認を経ていない」と。大韓サッカー協会は韓国の公益法人たる大韓体育会の傘下組織ゆえ、政府からの調査の対象になった。

 結果、ホン・ミョンボは当事者として9月に韓国国会から呼び出され、「文化体育観光委員会の懸案質疑」で証言するまでの事態に陥っていた。これは当然、韓国メディアでも大々的に報じられることとなり、ホン・ミョンボ監督のネガティブキャンペーンにまでつながった。

 いったい何があったのか。

 ホン・ミョンボ監督は、アジア杯での成績不振により解任となったユルゲン・クリンスマン監督の後任として7月8日に正式に選出された。

 大韓サッカー協会はその過程で幾多の外国人監督の候補にフラれ、さらにその後、2020年に蔚山でACL優勝の結果を残したキム・ドフン氏にもオファーしたが、「外国人がダメだったから、自分に来るのか」とフラれた。結局、代表監督の空白期間は約5カ月にも及んだ。その間、強化委員長がふたり辞任するという深刻な事態に陥った。

 焦った大韓サッカー協会が白羽の矢を立てたのは、蔚山の監督として前年のKリーグで優勝するなど、結果を残していたホン・ミョンボだった。しかし、度重なる辞任でその時強化委員長が空位だった。そこで、技術総括理事という役職だったイ・イムセン氏がホン・ミョンボ氏の自宅まで訪れ、オファーしていたことが発覚。これをかつてJリーグでも活躍したパク・チュホ元技術委員が「手続き違反ではないか」と暴露。ここから批判の嵐が吹き荒れた。

 背景がふたつある。ひとつ目は、韓国社会が「公正・平等」に厳しい目線を向けているということ。特に2017年から2022年までの文在寅政権時代にこの意識が高まった。

 もうひとつは折からの大韓サッカー協会会長批判。チョン・モンギュ氏はHYUNDAI創業者の甥にあたる。いわゆる「お坊ちゃま」キャラとして韓国では敬遠されがちなのだ。優しそうな顔をして、裏では独裁者のように振るまっているといった批判を浴びることが多い。実際、クリンスマン前監督解任からホン・ミョンボ監督選任までの過程のほか、「協会の私物化」「代表チームトレーニング施設建設費の不正申請」といった疑惑が投げかけられている。

 こういった流れに、ホン・ミョンボ監督は巻き込まれてしまった。本来なら多くが望んだであろう、過去のスター選手で認知度抜群。しかもKリーグで最高峰の地位にあった存在だ。しかし自国サポーターからブーイングを浴びせられ、国会で弁明する必要に迫られたのは悲劇としかいいようがない。

3 / 4

キーワード

このページのトップに戻る