サッカー日本代表の「キャプテンの役回り」とは? 久保建英、長友佑都の指名は適切なのか (2ページ目)
【「キャプテン」で失われるものも】
久保は勝利を託されるべき選手だし、チームを引っ張る覚悟もある。
「Tirar del Carro」
それはスペイン語で「荷馬車を引っ張る」が語源だが、転じてサッカー用語で「先頭に立ってプレーする」という意味を持つ。彼自身もその言い回しを用いるなど、所属するレアル・ソシエダでもチームを勝利に導くゴールシーンをつくっている。彼が得点を決めた試合は今も不敗で、ゲームリーダーなのは間違いない。だが......。
キャプテンは、心が削られる仕事でもある。
たとえばメンタル面が不安定な選手を見抜き、いち早く叱咤する。思い上がり、調子に乗っている選手は諌める。監督とコミュニケーションをとり、選手の意思を伝え、緩衝材にもなる。審判と唯一、試合中の会話が許されるだけに、何かあれば率先して介入し、問題を収め、時に強気に出なければならない。ピッチで選手を束ねる掌握力が不可欠だ。
ゴール、もしくはゴールに関わるプレーが求められる久保が、キャプテンに適当と言えるか?
キャプテンはポジション的に、ボランチ、センターバックが務めることが圧倒的に多い。サイドバック、ゴールキーパーが続く。
過去30年前後、ワールドカップで優勝した代表国のキャプテンを見ると、その傾向が当てはまる。1994年のブラジルはMFドゥンガ、1998年のフランスはMFディディエ・デシャン、2002年のブラジルはSBカフー、2006年のイタリアはCBファビオ・カンナバーロ、2010年のスペインはGKイケル・カシージャス、2014年のドイツはSBフィリップ・ラーム、2018年のフランスはGKウーゴ・ロリスだった。2022年のアルゼンチンはアタッカーのリオネル・メッシだが、彼は特別な存在である。
日本代表がワールドカップでベスト16に勝ち進んだ大会も、2002年の森岡隆三(宮本恒靖)、2010年と2018年の長谷部誠、2022年の吉田麻也と続いて、現在の遠藤につながる。彼らがキャプテンに相応しい理由は「後方から全体が見える、もしくは中盤センターで全方位を見渡せる」というプレーの場所もあるだろう。
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