なでしこジャパンの要・長野風花がリバプールで感じる成長への突破口「いい意味での図々しさ」とは? (3ページ目)
【いい意味での図々しさを身につけないといけない】
どんなチームでも"化ける"ことができるのが世界大会だ。パリオリンピックでは世界一に返り咲いたアメリカ同様、銀メダルに輝いたブラジルもそうだった。大会前には決していい仕上がりではなかった両チームが、戦うごとにワンチームとなっていく。ここからのなでしこジャパンに何を加えれば、ベスト8の壁を破る勢いが生まれるのだろうか。
「"我"じゃないですかね。我の強さ。いい意味でも悪い意味でも自分がシュートを打つ! 外しても『大丈夫、次、決めるから!』みたいなマインドが海外の人にはあるじゃないですか。いい意味での図々しさがある。日本人は配慮できるのがよさだし、空気を読むことだってなくしちゃいけないと思うんです。でも、もうちょっと私も含めて、質のいい図々しさ......これ、私、配慮できてます?(笑) このいい図々しさを身につけないといけないなって海外に出て本当に思うんです。
自己中心的な図々しさは日本人には向いてないけど、そういう一面も一人ひとりがここぞという時きに出すのも大切。まとまることはできるから、クリアな図々しさがあるといい。私も成長しないと!」
単純にスキルを上げるよりも簡単ではないかもしれないが、必要なマインドであることには違いない。そういうマインドにさせてもらえる相手も必要だろう。以前長野は世代別の代表として世界と戦う時、未知のパワーやスピードに「ワクワクする」と言った。今やその世界レベルが日常に落とし込まれたこの環境で、長野はどんな瞬間にワクワクするのか。
「私こう見えてすごくサッカー好きなので(笑)、いつもプレーできることにワクワクはあります。でもやっぱり強い相手を感じるとワクワクしますね。例えば......マンチェスター・シティでプレーしているスペイン代表のアレックス(ライア・アレクサンドリ)選手。今まで、センターバックを相手に自分の読みが外れることってなかったんですよ。でもアレックスがことごとく逆を取ってきた試合があって......。その時に『うわ、そっち出すんだ』って。フィジカルでやられることはあっても、読みでやられることは初めてだったので、そういうのはワクワクしますね」
磨きたいものは数多くあるとはいえ、そのひとつひとつに向き合うこと自体を楽しんでいる。この感覚を持ち続けている限り、リバプールにおいても、なでしこジャパンにおいても、長野の歩みが止まることはないだろう。
著者プロフィール
早草紀子 (はやくさ・のりこ)
兵庫・神戸市生まれ。東京工芸短大写真技術科卒業。在学中のJリーグ元年からサッカーを撮りはじめ、1994年からフリーランスとしてサッカー専門誌などに寄稿。1996年からは日本女子サッカーリーグのオフィシャルカメラマンも担当。女子サッカー報道の先駆者として、黎明期のシーンを手弁当で支えた。2005年より大宮アルディージャのオフィシャルカメラマン。2021年から、WEリーグのオフィシャルサイトで選手インタビューの連載も担当。
【写真】リバプールで奮闘! 長野風花フォトギャラリー
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