サッカー日本代表の1トップ事情を福田正博が解説 小川航基の活躍でレギュラー争いに変化あり? (2ページ目)

  • text by Tsugane Ichiro

【レギュラーは一朝一夕に変わるものではない】

 小川がスタメンでも結果を出したことは、日本代表FW陣にとって収穫だった。今回の結果によって、すぐに小川が上田に代わってスタメンの座を得るわけではないだろうが、上田に刺激を与える存在が現われたのは大きい。

 監督が試合に送り出す選手に求める要素のひとつに「計算の立つこと」がある。小川は、最終予選が始まるまで日本代表では未知の戦力だった。もちろん、クラブチームでのパフォーマンスや、現在に至るキャリアの変遷は把握していても、日本代表のピッチでどういう結果を残すかは、起用してみないとわからない部分が大きかった。そのため途中出場という限定された起用のなかで、戦力としての見極めが行なわれたわけだが、そこで信頼を得たので今回の先発出場につながった。

 そして、この11月シリーズで森保一監督やチームメイトに「上田になにかあれば小川が控えている」と思わせる結果を残した。当然、1トップの序列の最上位にいる上田も、「うかうかしていたら......」と思ったことだろう。

 ただし、レギュラーの座というのは、一朝一夕の結果で変わるものではない。試合ごとにメンバーが入れ替わっていては責任の所在が曖昧になってしまうからだ。チーム内に序列があることで、レギュラーの選手にチームの勝敗を背負う覚悟が生まれるものでもある。

 小川はまだ2試合のスタメンで結果を出したに過ぎないので、上田からポジションを取るのは現時点では簡単ではない。上田がこれまで日本代表で見せてきた働きは、それほど小さいものではないからだ。ただし、上田に「刺激を与える」存在が現われて、切磋琢磨できる環境が整い始めたことで、日本代表FW陣はここからW杯本大会に向けた時間で、さらに成長を遂げていけるはずだ。

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