サッカー日本代表はまたもベストメンバーを招集 相手を必要以上に警戒して「硬直」している (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【日本が予選落ちする可能性は限りなく低い】

 サウジアラビア、オーストラリアは中国、バーレーンより強敵だ。敗れる可能性は大いにある。2連敗もあり得る話だ。メンバー発表会見のひな壇に座る森保一監督、山本昌邦ナショナルチームダイレクターともども、W杯予選の大変さをしきりに強調した。絶対に負けられないムードを率先して煽ろうとした。

 問題は、日本がサウジアラビア、オーストラリアに敗れる確率だ。もっと言えば、すでに2勝を飾りC組の首位を行く日本が、今回のアジア予選で落選する確率だ。

 高く見積もってもせいぜい5%程度だろう。前回4.5だった枠が8.5に激増したことを踏まえると、日本は客観的に見て、実力と枠の関係において世界で最も楽な予選を戦っていることになる。これで本大会行きを逃したら世界の笑いものになるぐらい、ユルユルの環境に身を置いている。今回ほど、緊張感に欠ける予選も珍しいのである。
 
 この環境とどう向き合うか。問われているのは、逆にどう活かすか、だ。

 森保監督が最近好んでよく使う言葉に「したたか」がある。今回の会見でもしたたかな戦いをしきりに強調したが、この突破確率が95%はありそうな環境下で不動のメンバーを組むことが、「したたか」と言えるだろうか。「小心」「クソ真面目」のほうがはるかに適切だと考える。敗戦を極度に怖がり、万全すぎるメンバーで臨む姿は、戦力の無駄使いに他ならない。

 サウジアラビアとのアウェー戦、オーストラリアとのホーム戦は、確かにこの予選の山場かもしれない。サウジアラビアに対して、ある記者は会見の席で、アウェー戦の過酷な環境を不安視する質問を投げかけていた。過去の最終予選で日本は、まだアウェーでサウジアラビアに勝ったことがないと、少ない過去対戦のサンプルを持ち出し心配する記者もいた。サウジアラビアのサイド攻撃が強烈であることを訴え、対応を問う質問も出た。

 だが、肝心の戦力はと言えば、少なくとも今年のアジアカップで見たサウジアラビアに強いという印象は抱けなかった。

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