サッカー日本代表がピッチコンディションと戦ってきた歴史「12月には砂埃が舞い、雨が降ると泥沼状態に」
連載第16回
サッカー観戦7000試合超! 後藤健生の「来た、観た、蹴った」
なんと現場観戦7000試合を超えるサッカージャーナリストの後藤健生氏が、豊富な取材経験からサッカーの歴史、文化、エピソードを綴ります。ACLで韓国のスタジアムのピッチコンディションの悪さが話題に。ただ、日本も以前は芝の状態が悪く、泥沼のなかのサッカー日本代表戦もありました。当時の様子とそこからの改善の歴史を伝えます。
1985年に国立競技場で行なわれたサッカー日本代表のメキシコW杯予選 photo by AFLOこの記事に関連する写真を見る
【ACLで韓国のスタジアムのピッチコンディションが話題に】
今シーズンから新方式が採用された、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)エリートが開幕。第1節では韓国に遠征した横浜F・マリノスが、ACL初出場の光州FCに7対3というスコアで敗れたのが大きな驚きだったが、それ以上にショッキングだったのは韓国のスタジアムのピッチコンディションの悪さだった。
横浜FMの初戦の会場、光州ワールドカップ競技場のピッチは荒れ果てた状態だった(光州FCはKリーグでは光州蹴球専用球場を使っているが、ACLの施設基準を満たせないためワールドカップ競技場を使用)。そして、その翌日に川崎フロンターレが蔚山HD FCと対戦したが、蔚山文殊(ムンス)競技場の芝生の状態はさらに劣悪なものだった。
もっとも、横浜FMの大敗はピッチコンディションのせいではない。相手にはヤシル・アサニ(アルバニア代表)のようなシュート技術の高い選手がいたのだ。あれだけ守備が甘かったら、大量失点は必然の結果だ(週末にはサンフレッチェ広島にも6失点!)。
一方、川崎はピッチコンディションを考えて、ポゼッションにこだわる本来の戦い方を放棄。相手にボールを持たせて、プレッシャーをかけてミスを誘うという、現実的な戦い方で試合をコントロール。スコアは1対0だったが、内容的には完勝だった。
それにしても、あの韓国のスタジアムのピッチコンディションはどうしたものか。
たしかに、最近の異常気象や天候不順で芝生の養生が難しかったのだろう。しかし、それは日本でも似たようなもの。昨年は暑さのせいでJリーグのスタジアムでも芝生が荒れているところが多かったが、今シーズンは荒れたピッチは少なくなっている。昨年の経験を踏まえて、グラウンドキーパーのみなさんが努力を重ねてくれたおかげなのだろう。
それに、引き替えて、韓国のあのピッチは......。
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プロフィール
後藤健生 (ごとう・たけお)
1952年、東京都生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。1964年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、1974年西ドイツW杯以来ワールドカップはすべて現地観戦。カタール大会では29試合を観戦した。2022年12月に生涯観戦試合数は7000試合を超えた。主な著書に『日本サッカー史――日本代表の90年』(2007年、双葉社)、『国立競技場の100年――明治神宮外苑から見る日本の近代スポーツ』(2013年、ミネルヴァ書房)、『森保ジャパン 世界で勝つための条件―日本代表監督論』(2019年、NHK出版新書)など。